第63回:小規模な運送会社の厳しい現実

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第63回:小規模な運送会社の厳しい現実

2015年9月 1日

【質問】わが社は従業員8人の小さな運送会社です。現在、経営改善計画を銀行に提出し、再建の途中にあります。従業員のためにも何とか生き残りをかけて頑張りたいと思っています。わが社のような小さい会社の経営改善事例を教えてください。


 先日、遠方から東京の弊社事務所に相談に来られた社長がいます。その会社は社員6人の小規模な運送会社です。大きな紙袋で持参された経営資料を拝見しながら、会社の厳しい経営状況について聞かせていただきました。


 決算内容はかなり悪化しており、数年にわたる大幅な債務超過に陥っていました。借入金は年商の7割超を占め、明らかに借入過多の状態です。減価償却も近年実施していません。決算書を一目見ただけで、再建がかなり険しい道であると判断できる状態だったのです。社長は「経営改善計画を銀行に提出中ですが、銀行からはもっと具体的な改善策を提示してほしいと言われています」と説明されました。


 車両ごとの売り上げ数字を見ると、大型トラックの月間平均売上が50万~60万円と極めて低い車両が複数あります。「この車両は明らかに限界利益が出ていませんね。走れば走るほど赤字を膨らませています。どのような仕事ですか? 荷主や仕事の内容を変えることは出来ますか?」と尋ねました。社長は業務内容の説明とともに「昔から懇意にしている荷主で、時間の融通も利くし付き合いやすいので、止めることは難しいです」と言われました。「とにかくこの運賃で利益を出すのは困難です。人手不足の今こそ、新規荷主開拓のチャンスです。開拓活動を開始し、並行して既存荷主には運賃改定のお願い書を提出する準備を進めましょう」と伝えました。


 一方、コスト面では明らかに修繕費が過大で、標準値の2倍近い値を示しています。「重量物を運ぶため修繕費が多くなるのだと思います。車が古いせいかもしれません」との説明でした。「それにしても多すぎますね。車両ごとのコスト把握をより細かく実施していきましょう」と話を進めていきました。


 社長から「人件費を削減したいので給与体系を変更したい。社保のコスト負担についても併せて節約を検討したい」との相談を受けました。給与明細や賃金規程などの資料を拝見すると、給与体系上も実態上も残業代が明確に支払われていない状態だったため、まずはコンプライアンスの観点で改善する必要性を説きました。その上で、社員の理解を得て、より合理的な給与体系に変更することをお勧めしました。


 変更の方向性については、「社員のコスト意識を高めて、一人当たりの付加価値を上げることに努力したものが報われる体系に変更しましょう」と伝え、社員の工夫と努力を再建計画に活用するように具体的な改定案をアドバイスしました。社長からは「給与が高い一部の社員を賃下げしたい」との意向も出ましたが、その方法は今、とらないほうが良いと伝えました。「今は人手不足の状況で、社員が最大の資産です。特に、会社のために一生懸命頑張っている社員は手放してはいけない財産です。一方的な引き下げは社員の離反を招き、一気に倒産に向かう可能性が高いですよ」と、絶対避けるべきと伝えました。


 その会社の問題点は、人件費比率の問題ではないと決算書上から既に分かっていたからです。その会社はまだまだやるべきことがたくさん残されていました。しかし一方で、次の決算で明確な改善結果を示す必要がありました。時間の猶予があまりない状況です。このような会社では、長期的な視点と短期的に効果を出す対策とをバランスよく組み合わせる必要があります。冷静かつ大胆に対策を実行することが求められます。


 小規模な会社の中には同様の状況に陥っている会社が多数見られますが、小さい会社には大手が真似のできない小回りが利く強みがあります。マナーなどの品質を高めれば、物流業界で十分に勝ち残れます。諦めずにやるべき対策を打ち続けることが大事だと思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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