第61回:旧態依然とした経営の脱却

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第61回:旧態依然とした経営の脱却

2015年8月 4日

【質問】当社は創業から20年を経過していますが、いまだに旧態依然とした経営体質です。よく言えば家族的経営ですが、運送業界の厳しい環境に耐え、勝ち残ることができるか不安を感じています。企業らしい経営管理に転換したいのですが、古い社員が多く、いきなり理想像を追うのも躊躇しています。今後、どのように整備していけばよいでしょうか。


 現在の運送業界には、ご質問のような悩みを持つ会社が実に多く見られます。特に、創業経営者が代替わりの時期になり、「昔のままに経営されてきた会社を何とか変革しないと、本当に先がないのでは」と、悩む後継者の声を聞くことがあります。


 私は20年以上運送業の経営相談に応じてきましたが、実際にどのような会社が伸び、どのような会社が停滞しているかを考えますと、やはり旧態依然とした実態に合わせた経営管理方法をとっている運送会社は、業績も停滞していると言えます。


 伸びている会社の共通点を見ると、社内の管理方法は、その会社の実態よりも少し背伸びしたぐらいがちょうど良いようです。つまり、自社の実態の120%ぐらいの管理レベルを目指すと良いといえます。


 社内体制整備の目的は、(1)経営管理レベルを上げて生産性を向上させること(2)コンプライアンス面を整備して簡単には崩壊しない経営体質をつくること(3)経営基盤を安定させて従業員とその家族の安心と幸せを達成すること、です。経営者はこの目的を社内に堂々と宣言し、断行することが仕事だと認識すべきでしょう。


 管理レベルを上げるという観点で、手を付けるべき改善ポイントは、例えば、(1)経営計画や業績管理の策定または修正見直し(2)従業員のレベルアップに通じる教育体系の整備(3)ホームページ(PC、携帯用とも)の新設やリニューアル(4)社内組織の大胆なゼロベースでの見直し(5)社内管理に関するあらゆる諸規定類の整備、などが挙げられます。


 現在、運賃の交渉や売り上げアップ策、経費削減策の検討は日々多くの運送会社で行われていますが、その経営努力が一過性で短期の効果しかなく、自転車操業のような厳しい経営に陥っている会社があります。次の世代まで力強く継続していくような経営管理方法を今こそ作り上げる時期だといえます。


 しかし、気を付けなければいけないのは、あれもこれもと同時に手を付けると失敗します。一つひとつ着実に見直しを進めていくほうが良いでしょう。また、その際に「うちの社員に経営計画や数字の話をしても、絵にかいた餅とまったく関心を持たないのでは」「目標管理と言っても幹部さえ理解してくれないのでは。だいたい経営幹部ができない」などと会社の現実を見て躊躇しないことが大事です。自社の現実を見て一向に改善が進まないという会社が多いのです。


 結果として本来あるべき姿から目をそむけ、「弾力的な運用」という曖昧な表現で、ぬるま湯のような管理でお茶を濁す会社があるのです。従業員を大事にすることと、ぬるま湯の管理とを混同していると、いつまでたっても社会が求めるメリハリの効いた企業になることができません。


 会社をより良く変えようとすれば、社長の決断次第でいくらでも断行すべきことがあります。社長自身が甘えの姿勢に入ると会社は決して変わらないのです。成功している運送会社の管理方法や導入方法については身近な専門家の助言を得て進めるのも良いですし、自社で幹部を集めて検討を始めるのも良いと思います。他社の模倣から形を作っていく方法も効率的で良いやり方です。肝心なことは自社の実態の120%ぐらいのレベルを狙って作り上げていくことだと思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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