第60回:服務規律に必ず入れるべき文言とは

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第60回:服務規律に必ず入れるべき文言とは

2015年7月21日

【質問】最近、辞めた社員から突然内容証明を送られ、その対応に大変苦慮しました。今後の労使トラブル防止のため、社内ルールである服務規律の見直しが必要と感じています。運送業の服務規律に必ず入れておくべき文言があれば教えてください。


 平成16年の労働基準法改正以降、就業規則の中で特に「制裁基準の明示」が重要になりました。就業規則に明記してある内容以外の理由で制裁の対象にすることができなくなったからです。


 解雇基準や制裁基準の明確化とともに重要なのが、「服務規律の整備」です。服務規律が10項目程度の古いひな形を使っている会社は、現代の複雑化する労使トラブルに対応できない可能性が高く要注意です。労使トラブルが多い運送業の服務規律は最低でも50項目以上、できれば100項目以上の細かい記載が必要です。

 あまり細かく記載しないほうが良いとの意見も一部にありますが、私は、従業員に説明し内容をよく理解してもらうためには、具体的な禁止内容を記載するほうが良いと考えます。その上で、「その他上記に準ずる行為」を包括的に禁ずる内容を追記すれば良いと思います。服務規律に記載すべき内容は数多くありますが、ここでは特に記載のない会社が多く見られる文言について採り上げたいと思います。


 まず、一例として挙げたいのは、「反社会的団体に所属しないこと。反社会的団体と交流しないこと」との規定です。大手荷主との運送委託契約書には必ず入っている文言ですが、この内容を従業員との契約である就業規則に入れていない会社がほとんどです。社会的に要請されている重要事項は必ず盛り込むべきでしょう。


 また、「会社の内部管理資料その他書類の無断コピー、持ち出し等を禁ずる」との文言も入れるべきです。最近は労使トラブル事案が急増していますが、多くは従業員が会社を辞めた後に内容証明を送り付けてくるケースです。そのほとんどのケースでは、在職中に無断で会社の内部管理資料をコピーし、持ち出しています。また、辞める一か月前から突然、意図的に長時間残業を申し出たケースもあります。一部の事案ですが、後日、会社に請求することを意図して証拠を残す行動も見られました。社長は「彼も改心して意欲的に働くようになった」と喜んでいたら、それが裏目に出たというケースです。


 さらに盛り込むべき文言として「業務中、業務外を問わず酒気帯び、飲酒運転を禁ずる」との規定も必要です。業務中は当たり前ですが、プロドライバーは業務外でも許されないと強く禁ずる必要があります。


 他に「セクハラ、パワハラにあたる行為は禁ずる」旨の規定も重要です。セクハラ禁止文言は大抵の会社が記載していますが、パワハラ禁止について記載のある会社は少数です。


 自分の首を絞めるとの意見もありますが、会社として禁じている旨を服務規程に明記することが会社を守ることにつながります。なお、燃費向上や事故削減、車両管理の徹底など日常指導している内容は、就業規則の服務規律にはっきりと記載して労働契約の内容とすべきでしょう。


 意図的に実行しない、あるいは無視するなどの従業員に対しては、労働契約違反として対応する厳しさも時には必要な場合があります。あいさつの励行や服装、マナーなどについても同様です。「○○運送会社の従業員としてこれは許されない」と考える内容は労働契約である就業規則の中に明記しておくべきです。「規程は厳しく、運用は暖かく」がメリハリのある強い会社を作る要諦だと思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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