第57回:部下のやる気を引き出す指導育成法

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第57回:部下のやる気を引き出す指導育成法

2015年6月 9日

【質問】当社は社員数約200人の運送会社です。社歴が長く、地元では比較的規模の大きい運送会社に入ると思います。現在の一番の課題は管理職の育成です。ベテラン社員は多いのですが、部下の指導に期待した役割を発揮してくれません。やる気を引き出し、生産性を上げている指導育成例があれば教えてください。


 地方のある中堅運送会社の取り組みを紹介します。その会社は毎月1回、管理職と若手のリーダークラスを集めて経営書の回し読みをしています。著名な経営者の体験と経営哲学を書いた本です。読後に自らの業務に結びつけて感想を述べ、意見交換する時間を設けています。


 その会社のドライバーは極めて貢献意欲が高く、荷主の喜ぶことに対して敏感に反応します。自ら考えて行動しています。例えば、荷主の新商品のチラシを配送先で紹介し、新規取引の獲得につなげています。自社ではなく、荷主の商売に貢献しているのです。また、配送先の玄関口が汚れていれば、常時持参している化学雑巾で拭いています。これらの行動は会社が命じたことではなく、ドライバー自身が考えて行動しているのです。


 人は誰でも「意味」を見いだせることに対して「意欲」を持つことができる、と言われます。今の物流の仕事、そして自らのドライバーとしての仕事が、どのような社会的意味を持つかを理解すれば、行動に表れてきます。そして自分自身が貢献している実感を持てれば、さらに努力していこうと思うのが人間です。運送業で働く人は車が好きで、運転が好きな人が多いです。将来の夢も持っています。今の物流の仕事が将来の自分にとって十分意味があることだと理解させ、指導することが部下を導く重要なポイントになります。


 そして、そのためには管理職自身が部下にとって目標になる姿を見せなければなりません。この人の下なら成長できる。自分の力が発揮できる。あの人のようになりたい。と思わせる管理者にならなければなりません。その人に頼まれると「やります」となります。


 そんな管理職を育てるにはどうするか。ぜひ管理職に自分のビジョンを語らせてください。管理職が明確なビジョンを持っていないと部下を導くことはできません。指導の軸がぶれてきます。なぜ物流の仕事をしているのか。何の目的で働いているのか。管理職自身の目的や目標が頭の中で鮮明に描けるほど徹底して考えさせ、発表させてください。そうすれば、何を大切にして部下を導いていくのか。自ら答えを出すようになります。部下との人間関係を築き、部下の夢や希望と現在のドライバーの仕事とを結び付けて語れる管理職になっていきます。


 その際に、併せて、部下へのフィードバックの仕方など話法技術的な管理職研修を組み合わせて実施すると、より効果が期待できます。「人は褒められた時にやる気を出し、責められた時にやる気を失う」。この簡単な部下管理の原則について管理職全員が理解し、実践すれば、部下の行動に大きな変化が起こることを実感できるはずです。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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