第56回:賃金体系で社員の行動が変わる

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第56回:賃金体系で社員の行動が変わる

2015年5月26日

【質問】わが社は社員数30人ほどの中小運送会社です。現在、賃金体系のうち、特に手当の見直しを検討しています。賃金は社員のモチベーションに影響すると思いますが、賃金体系を変更して良い効果があった事例があれば教えてください。


 近年、運送業界では燃料費などのコストアップに加え、安全対策などの諸経費負担により、労務費の支払い能力が限界に近づいています。そのような状況下で社員のモチベーションを高め、さらに最低賃金や残業代などの法令を順守する賃金体系に見直すことが課題になっています。


 賃金体系を見直したいとの運送会社からの相談は年々増加しています。最低賃金が大幅に上昇し、一方で残業代未払い問題が各地で多発しているため、基本給などの固定給と割増賃金の占めるウエートが両者ともに高まり、労務費対策が急務になっているためです。


 必然的に所定内賃金の手当をどう効果的に設定するか、が極めて重要になってきました。運送業の現状で残業代未払いを防ぐためには、所定内手当は2万円程度の設定が限度になりつつあります。また、以前は残業単価に入らないという理由で家族手当や住宅手当、通勤手当などを支給する会社が多く見られましたが、現在、見直しの主流は業務に関係する効果的な手当のみで構成する傾向に変化しています。質の良い社員を確保し維持するためには貢献度に応じた手当が不可欠になっており、その他の手当は支給する余力がないという事情が背景にあります。


 貢献度に応じた処遇をするためには、会社が社員に求めることを明確にして、その達成度を手当に直接反映させることが重要になります。例えば、「業務品質手当」を設定し、デジタコの安全運転評価点で毎月の支給額に差をつけ、事故防止の意識づけに成功している会社があります。この場合、事故を起こせば、評価点に関わらず支給額は削減されます。


 また、「燃費向上手当」を設定し、目標燃費を達成した月に支給して、コスト意識の醸成に成功している会社もあります。その他、ある食品輸送専門の中堅運送会社は健康管理のため「禁煙手当」を設定し、運用を開始した途端に、大半の喫煙者が禁煙外来に通いだしたとの実例もあります。


 また、報告、連絡、相談の徹底を目指して「報連相手当」を支給し始めてから報告や連絡が以前より早く来るようになったとの事例もあります。洗車管理者などの現場管理者を手あげ方式で募ったところ、自分にやらせてほしいとの声が多数からあがり、車両管理の徹底に成功したという事例もあります。


 ただし、手当を数多く作ることは賃金体系の煩雑さにつながり決して望ましくありません。あくまでも会社が重視する項目に絞って、かつ所定内手当の総額を適正な金額内に収めて、職務の貢献度を反映するように手当を設定することが重要なのです。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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