第55回:企業理念がない会社は羅針盤のない船

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第55回:企業理念がない会社は羅針盤のない船

2015年5月12日

【質問】最近は人手不足で困っており、採用に役立つ会社のホームページを作りたいと思っています。ホームページの作成を委託した業者に「企業理念」について聞かれ、戸惑いました。当社のような少人数の中小企業でも企業理念など必要でしょうか? また、企業理念とはどのように決めればよいのでしょうか?


 企業理念は会社の存在理由の宣言です。何のために会社を作り、活動しているのかを社内外に知らせるものです。会社の規模に関わらず(例え、従業員1人の会社であっても)必ずなくてはならないものといえます。なぜなら全ての企業活動の中心に位置づけられるものだからです。


 企業理念には特に決まった作り方や定義があるわけではなく、経営者が何のために今の会社を作ったか、その根源的な思いを言葉(文字)にすればよいのです。文章の長短もまったく無関係です。中には簡潔な一言だけで表している素晴らしい企業理念も見られます。


 何でも良いといっても、もちろん自己の利益だけを追求するような企業理念は不適当です。会社が社会の中で果たす役割や存在価値を表すものが望ましいでしょう。企業理念には経営者の思いが凝縮されており、その会社の経営方針や教育方針、人事処遇など一切の経営活動の基軸になるため、会社のホームページの冒頭部分に掲げることは当然です。もし、企業理念が全くない会社(存在しても外部に明示していない場合を含む)であれば、その会社は羅針盤のない船と同じであり、そのような船に乗ろうとする人はいないでしょう。


 現在、運送業界の大きな悩みは人材が不足していることで、採用したくても応募する人がいない、というのが実態です。もし良い人材を採用したければ、応募する人の立場に立って企業情報を積極的に開示し、不安を取り除く必要があります。企業理念、経営方針、人材育成方針、将来ビジョンなどを明示して、安心感を与えること。企業理念の明示はその大切な第一歩と言えるでしょう。


 私は全国の運送会社を訪問していますが、時々、会社の玄関を入るとすぐ目の前の壁に大きく企業理念が掲げられている会社があります。そのような会社に行くと、経営状況を聞かなくとも経営内容の良さが想定されます。そして社内に企業理念が掲げられている会社は、大抵、応接室や会議室の壁に経営方針や経営目標、行動指針などが張られていることが多く、安全目標などは例外なく掲示されています。また、私の経験からすると、企業理念(経営理念)、経営方針のいずれかの中に、社員とその家族の幸せを追求する宣言が入っている会社のほうが業績も伸びているようです。社員を大事にし、物流を担う会社として社会に貢献していく、という宣言が、伸びている会社に多いパターンだと思います。企業理念は社会状況の変化などにより、随時、見直ししていくことも可能です。


 創業時に作った理念が現在の状況からずれてきたようであれば、今求められている企業理念を再度検討してみるのも良いかと思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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