第53回:今のうちに行うべき地震対策

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第53回:今のうちに行うべき地震対策

2015年4月14日

【質問】近い将来、再び大規模地震発生の可能性が高いと言われています。物流に携わる者として、大地震への事前対策が必要と感じています。中小企業の取り組み状況や中小運送会社が行うべき事前対策について教えてください。


 東日本大震災の発生以来、物流業でも地震対策を含む事業継続計画に関心を持つ会社が増えてきました。ただし、中小企業全体でみると十分に取り組みが進んでいるとは言えません。事業継続計画を策定済みの会社は1割程度、策定を予定している会社を含めても3割程度と低い状況です。


 取り組み状況が低い背景には、(1)法的規制がない(2)策定したくても人手がない(3)ノウハウがない、などの理由があるようです。一方、荷主や大手物流企業は、有事の際のサプライチェーン確保の観点から、取引運送業者の地震対策の取り組みに高い関心を示しています。地震などを想定した事業継続計画への取り組み姿勢は、運送業務委託先を選定する際の重要なポイントになりつつあります。「いつか時間があるときにやろう」と考えるのではなく、すぐに手を付けるべき経営課題と認識すべきです。


 今、中小運送会社が行うべき対策は大きく分けて(1)ハード面における防災対策(2)人命安全確保など被災時に行う事項の事前ルール化と徹底(3)代替手段の確保など、物流機能を早期復旧するための事前対策、になると思います。


 (1)の「ハード面における防災対策」としては、例えば、倉庫内ラックが固定され転倒しないか、など施設全体の耐震対策があります。また、保管している貨物が地震により荷崩れしないか、など保全対策の確認も必要です。事務所内の安全対策や重要書類の複数保管場所の確保、データのバックアップなど、コンピューターの保全対策についても事前に点検しておくとよいでしょう。


 (2)の「人命安全対策」は最も優先すべき対策です。従業員や家族、会社関係者などの安否確認の方法、津波発生時の避難ルートなどは必ず事前に確認しておくことが大事です。また、緊急時対策本部設置のルールを決めておく必要があります。誰が何をどうやって行うのか、具体的に責任者を決めて徹底しておくことが重要です。チェックリストを作って全員で共有しておくとよいでしょう。


 (3)の「早期復旧対策」については、まず燃料の確保が重要になります。緊急時に燃料が不足する、届かない、などの事態が想定されます。インタンクの確保が必要ですので、数社共同で複数のインタンクを確保するなど、事前に協定しておくとよいでしょう。また、地震、津波によって物流拠点を失う可能性があります。代替できる物流センターや代替ルートの確保が重要です。中小運送会社では複数の拠点を保有することが難しいので、荷主や同業者とともに緊急時の対策を検討しておくとよいでしょう。


 東日本大震災の際も「必要な設備・車両の共同利用について事前に協議していた」という運送会社の例があります。緊急時には迅速な判断と決断力が求められます。平時のうちに対策を検討しておくことが何より大事なことなのです。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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