第52回:役職が人の行動を変える

連載トップへ

第52回:役職が人の行動を変える

2015年3月31日

【質問】当社は社員数40人。パートを含めて約100人の運送業です。先代の考え方で運転、倉庫作業などの現業社員は役職に就けていません。今、役員以外の役職者は社内に数人だけです。倉庫の新設などで社員数も増えており、見直しを検討しています。運送会社の役職は、どうすれば合理的でしょうか?



 経営者やコンサルティング会社の中には「役職の乱発は役職位の役割や責任があいまいになるので、極力抑えたほうが良い」と考える人もいます。ご質問の会社も、その信念で通してきたのだと思います。しかし、役職はモチベーションアップの重要な要素です。仕事に対する動機づけは給料だけではありません。


 例えば、同窓会で久しぶりに同期の仲間と会う時。大企業に就職した友人はまだ役職がないが、中小運送会社に勤めた自分は課長の名刺を出すことができます。家庭内でも同様で、責任ある役職についていることが家族の信頼につながります。役職にはやりがいに結び付く要素がたくさんあります。


 あるドライバーが主任に任命された途端、コスト意識や安全意識が見違えるように向上したケースがあります。その会社の社長は、「若手社員を育成する一番簡単な方法は役職を付けることだ」と言います。「役が付いてから、積極的に提案し、発言するようになった」と喜んでいます。「うちは他の会社よりワンランク上の役職を付けるようにしている」と言います。


 例えば、ドライバーとして1年経験を積むと「主任」に任命。洗車・車両管理の責任者にしています。通常の班長クラスは「係長」と呼称。営業所長の役職呼称は「営業部長」。通常の営業部長は「営業統括本部長」。総務部長は「管理本部長」です。この役職は対外的な折衝やクレーム処理にも有効とのことです。「給料を上げないで、やる気を引き出せる」と本音も教えてくれます。役職が人の行動を変える典型的な例だといえます。


 一方、役職についてはコンプライアンスの面から検討することも重要です。例えば、時間外手当の支給対象から除外できる管理監督者の範囲です。会社で適当に線引きして、この役職以上は「管理職だから時間外支給対象外」としている会社があります。

 
 しかし、労基法に定めた管理監督者の範囲は極めて限定的です。いったん争いになれば、人事権や勤怠管理などの実態を厳格に判断されます。仮に、課長代理・所長以上は一律に時間外対象外としている会社があれば、労働者側から問題提起された途端に、是正を余儀なくされる可能性があります。今、コンプライアンスの観点からも役職の整備が必須といえます。


 また、今後はますます人手不足になり、人が最大の資産になります。これからの経営は権限をできるだけ社員に委譲し、責任感を醸成して会社全体の底上げを図ることが求められます。運送会社は勝ち残りのためにも、「役職の効用」をうまく活用していく時代が到来していると思います。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

過去の連載記事

連載トップへ
 

筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

GoogleAD