第51回:定額時間外手当を検討する際の留意点

連載トップへ

第51回:定額時間外手当を検討する際の留意点

2015年3月17日

【質問】わが社では、能力が低いドライバーほど残業が多く、貢献度が高く仕事のできる社員ほど同じ作業を早く終えてしまいます。労働時間と貢献度が反比例しており、賃金を決めるときに大変悩んでいます。仲間の運送会社が定額時間外手当で支払っていると聞きましたが、この支払い方法について教えてください。


 近年、運送業界で時間外手当など、割増賃金の未払い問題が多発しています。そして、ほとんどのケースで会社側が負けています。会社側が意図的に時間外手当を支払っていないケースも一部にありますが、大半のケースでは賃金について正確な法律知識が不足し、いい加減な支払い方をしていることがトラブル発生の原因になっています。


 実際に、周辺の運送会社より高い賃金を支払っていても、法的には割増賃金が不足しているため法違反を指摘され、労働者側から訴えられる例が見られます。割増賃金の算定基礎額や計算基準については労働基準法で定められています。そして、労働基準法に定めた計算式で算出された金額を下回ってはならないと規定されています。


 ただし、計算の便宜上、その都度の計算方法をその他の計算で行うこと自体は、労使間で合意されていれば問題がないと解されています。定額時間外手当等がよく見られるのはこのためです。とはいえ、労働時間管理は正しく行い、法律上必要な支給額に対して不足が生じれば補填する必要があります。


 また、賃金のうち割増賃金にあたる部分を賃金規定、給与明細書等で明確に区分しておくことが前提になります。運送会社の場合は、運行業務の内容で所要時間の多寡がほぼ決まってきますので、計算の便宜上、運行方面別に想定される労働時間から定額時間外手当を決め、運行業務に伴い通常発生する「(運行)時間外手当」として支給する方法を採用する会社があります。これは、みなし労働時間やみなし残業という考え方ではありません。時間外手当の額を業務内容に応じてあらかじめ定めた方法で計算し、不足額は補填する方法です。これにより、貢献度が高い社員のほうを賃金総額で処遇することが可能になり、全体の生産性向上につなげようとしています。


 労働実態からみて、荷役作業で労働時間の多寡が決まる場合には、荷の積み下ろし件数を計算に加えて算出する会社もあります。また、運行ルートや配送先が毎日変わる場合などには、実走行距離など労働時間との関連性が高い指標をもとに「(運行)時間外手当」を計算している会社もあります。この支払い方を検討する場合、最も留意すべき点は、労働時間の管理を正しく行うこと、計算した割増賃金に不足が生じた場合は補填すること、を規程の文言だけでなく、日常実践することです。


 また、割増賃金として支給していることが賃金規程や労働契約書、給与明細書などで明示されていない場合は認められず、残業単価に組み込まれて再計算されるので十分注意する必要があります。特に、賃金改定時には、社員説明の実施、全員の同意書取り付けなど細心の注意を払うことが重要といえます。


(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

過去の連載記事

連載トップへ
 

筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

GoogleAD