第48回:事故分担金規程はどう作る?

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第48回:事故分担金規程はどう作る?

2015年2月 3日

【質問】わが社は過失事故を起こした社員に対し、「弁償金」の名目で修理代の一部を本人負担にしています。先日、事故を起こした社員から「規程を見せてほしい」と言われ困りました。ルールを明確に決めておきたいのですが、事故分担金の規程はどう作ればよいのでしょうか。


 損害賠償額をあらかじめ決めておくことは労基法の定めによりできません。しかし、社員の故意、過失により会社が損害を受けた場合、会社が現実に生じた損害について当該社員に賠償請求すること自体は禁じられていません。ただし、この場合でも過度に請求することはできません。社員の過失と会社の管理上の責任などを勘案し、一般的に認められる範囲で請求する必要があります。運送会社は多くの場合、運転に伴う事故リスクが当然に想定され、社員だけにその責任を問うことはできません。過去の例からも、実損額の2割から3割程度が認められる範囲と考えるべきです。

 一方、労使のトラブルを防ぐために判断ルールを決めて、書面で労使間の合意を得る方法をとることがあります。事故発生のつど、社長の判断で決めるというやり方では納得を得られないためです。書面化する際に、運送会社でよく使われている規程が「事故分担金規程」です。名称は「賞罰委員会規程」や「損害賠償に関する規程」などとすることもあります。

 どう作るかは労使で決めればよいのですが、一般的には次の3項目について記載しています。(1)損害賠償の対象とする事故費用の範囲(2)本人の責任度合を決める判断基準(3)事故分担金の割合と事故を繰り返した場合の付加割合、です。事故費用の範囲は「人身事故」「車両および物損事故」「商品および品質事故」に分けて、修理代、商品弁償代などと細かく記載してある規程も見られます。「責任度合」の決め方は会社により異なります。主な事故内容と事故の発生原因、過失の度合を挙げて、10%、20%、30%、と段階的に設定し、ひき逃げや酒気帯びなどは責任度合100%としている会社もあります。

 「事故分担金」は通常、「事故費総額×責任度合×20%~25%」とする会社が多いようです。また、同一年度に過失事故を繰り返した場合は、2回目以降に分担割合を5%程度付加している会社もあります。事故分担金制度を作る場合は、併せて無事故表彰制度を作り、社員のモチベーションを下げない工夫が求められます。事故分担金は社員の不安につながることがあり、検討の際は慎重に行う必要があります。

 また、損害賠償を賃金から一方的に控除することは法律上認められませんので、必ず本人の個別の同意を得る必要があります。「事故分担金規程」が必要のない会社になるのが一番です。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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