第45回:賃金制度改定で失敗しないコツ

連載トップへ

第45回:賃金制度改定で失敗しないコツ

2014年12月23日

【質問】当社は従業員の賃金制度を見直したいと考えています。給料を下げたいわけではなく、過去に適当な決め方をしてバラバラになっている現状を整備することが目的です。労働条件を変えるのは難しいとよく聞きますが、失敗しないコツがあれば教えてください。


 賃金制度の見直しは、運送会社から何度も相談を受ける関心が高いテーマです。質問者のように賃金引き下げが目的ではなく、未整備の状態を何とか改善したいと感じている会社もたくさんあります。確かに労働条件の変更は会社側が一方的に行うことはできません。また、変更する場合は、その必要性や合理性が求められます。

 今回の質問は「失敗しないコツ」ということですが、それはマネジメントの観点と法律的な観点との両面から押さえておく必要があります。まず、新賃金制度を検討するときは「他社の真似ではなく、自社の実情に合わせる」ことが大事です。稼働する時間帯や距離、荷役作業の有無、立ち寄り先など、どれをとっても同じ業務内容の会社はありません。同業者に聞いて、そのまま賃金体系を導入したら全く合わず、再度やり直したという会社は多いのです。特に「会社全体の適正人件費」と「賃金に反映する実績基準の作り方」の二つは、会社により全く異なりますので自社の現状に合わせて作ることが何より重要です。

 次に、新賃金制度の素案ができたら実在者の賃金に照らして、金額やレートを変えた「賃金シミュレーション」を複数回繰り返してください。何度も検証することが失敗を防ぐ重要な工程になります。また、当たり前ですが、「法律を知る」ことが大変重要です。特に労働法と判例です。これは身近の専門家に確認されると良いでしょう。

 失敗するケースで最も多いのは、法律を無視して改定し、後日、監査などで指摘され作り直すというケースです。法律的に問題がないか、必ず確認しておくべきです。また、それに関連しますが、「手続きを手抜きしない」ことが失敗しないコツです。(1)社員説明(説明用の資料を作ることが大事)(2)全員の同意書をとる(賃金改定の会社説明を聞いて同意します、との書面)(3)新しい賃金規定を周知し、代表者に意見を聞く(4)労基署に提出、の流れはどれも欠かさず行う必要があります。この手続きが面倒だから省きたいと思いがちですが、失敗したくなければやるしかありません。

 最後に、「全体の書類の整合性」がとれているかを必ず確認します。具体的には賃金規定、賃金台帳、給与明細の三つが、賃金項目、所定内外の分類など全てにおいて合致していることが後日のトラブルを防ぐために必要です。

 制度改定で失敗しないコツは、これらのやるべきことを愚直にやり遂げることだと思います。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

過去の連載記事

連載トップへ
 

筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

GoogleAD