第43回:距離歩合中心の給料体系はなぜ良くないのか

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第43回:距離歩合中心の給料体系はなぜ良くないのか

2014年11月25日

【質問】当社は中・長距離輸送が中心の運送会社です。現在、運転職の給与を基本給と距離歩合で支払っています。最近、従業員から仕事と給料が見合っていないとの声が出ていますので、対策を検討しています。距離歩合は見直したほうが良いのでしょうか?


 距離歩合は運送会社の給料体系のほぼ2割を占めており、運送業界で比較的よく見られる支払い方法です。距離歩合が導入される理由の第一は、走行距離の把握が容易であることです。運転職の給料を働いた仕事量で決めようとすると、各人の業務量を正確に把握する必要があります。

 本来、経営者としては社員が稼いだ売り上げで決定したいところですが、荷主により運賃が異なるため、単純な売り上げ歩合はドライバー間に不公平感が生じやすい面があります。その点、走行距離は間違いなく運転業務量そのものであり、納得性があるため、歩合基準として取り入れやすいのです。そこで、特に長い距離を走る仕事では距離歩合を採用している運送会社が多いようです。

 ところが、距離歩合の最大の難点は、生産性と必ずしも一致しないということです。地理に不案内なため道に迷って余分に走行したドライバーのほうが高い給料になる。極端に言えば、まっすぐ帰ってくるより、遠回りをしたほうが給料を増やせるという仕組みになります。

 ある中小運送会社で実際に起こった事例では、こんなことがありました。経営者が近隣の住民から苦情を言われました。「お宅のトラックがいつも夕方、近所の公園駐車場に停まっていて困る。注意してほしい」。そんなはずはないと思い、調べてみると数人のドライバーが回り道をして少し離れた公園で時間をつぶしてから営業所に帰っていたことが判明しました。距離歩合も、時間外手当も稼げるとの考えから起こした行動でした。

 距離歩合が悪いとは一概に言えませんが、私はあまりお勧めしていません。導入するなら距離だけでなく、ほかの要素と組み合わせて検討すべきとアドバイスしています。最近は、物流における荷役作業のウェイトが大きくなっており、走行距離よりも積み下ろし作業のほうが運転職の負担が大きくなっています。走行距離の多寡より立寄り件数の多寡のほうが労働実感と合うのです。また近年、物流合理化の流れの中で、荷主の拠点統合などで走行距離が延びて運賃が下がるという実例も出ています。距離歩合中心の人件費決定は、社員の労働実感だけでなく、経営実感とも徐々に合わなくなっているのです。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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