第29回:運送会社の退職金制度

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第29回:運送会社の退職金制度

2014年5月13日

【質問】運送会社を経営しています。明確な退職金制度がなく、退職者には5万円から20万円程度を渡しています。最近採用した社員から退職金制度について聞かれ、はっきり決めておく必要を感じています。他の運送会社ではどうしているのでしょうか?


 私がお会いした会社は全国で3000社程度ありますが、そのうち中小運送会社で退職金制度を規程化している会社は全体の半数程度です。全く支給せず退職金規程もない会社が3割程度あります。また、退職金規程を作らずに慣習的に社長の独断と裁量で支給している会社が2割程度あるというのが実態です。

 ご質問の会社のように明確な規程がなく社長の裁量で支払っていると、後日金額をめぐるトラブルが発生する可能性があります。良かれと思って支給したことが自分の首を絞めることになるので、裁量で支給することはすぐにやめるべきです。そもそも退職金は支払うか否かを会社が決めればよいもので、規程を作り制度化する義務はありません。

 しかし、いったん退職金規程を作るか、もしくは慣習として退職金を支給した実績があると、その後会社に支給義務が生じます。規程を作り制度化している会社では、中小企業退職金共済を活用している会社が多く、メリットを考えれば良い選択といえます。

 ただし、在職中の貢献度や辞め方などを反映できないため、経営者の中には不満を持つ人もいます。一方、規程を作りながら支給原資をまったく積み立てていない会社も珍しくありません。将来確実に問題になりそうな危うい会社が多くみられます。退職金制度を検討する場合は、他社の真似をするのではなく、自社の事情に照らして考えることが大事です。

 (1)退職金制度を作る必要性(採用目的など)(2)支給対象者(勤続3年以上など)(3)支給額の決定基準(計算方法など)などをよく検討し、会社の支払い能力に応じた支給額を検討すべきです。中小運送会社の退職金額はおおむね「勤続年数×6~10万円」程度が一般的です。なお、支給基準に退職時基本給の何倍という計算をしている会社がいまだに多いのですが、最低賃金が年々上昇しているため、この方式は将来のコスト負担が膨張します。

 基本給とは切り離し、勤続による定額にするか、役職貢献度等を考慮したポイント制にするほうがよいと思います。また退職金を支給する以上、支給原資の積み立ては必ず行う必要があります。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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