第28回:経営意欲が低下した

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第28回:経営意欲が低下した

2014年4月29日

【質問】小さい運送会社を経営しています。最近はコスト増で赤字が続いており、個人の資産を食いつぶして継続している状態です。創業当時の経営意欲が薄れてきました。将来、事業譲渡を検討すべきでしょうか。


 運送業は全国で厳しい経営環境が続いています。「もうやっていられない」と思った経験を持つ経営者も多いでしょう。ご質問の会社のように、経営意欲減退を訴える経営者が時々いますが、実際に事業を止めることはなく、愚痴を言いながらも歯を食いしばって経営されています。もし本当に意欲をなくしたならば、社員と取引先のためにも経営破綻する前に事業譲渡を検討すべきです。経営者が意欲を失うと会社立て直しは不可能だからです。

 「経営意欲」について痛感した事例があります。以前、セミナーで講演した後にお会いし、大変印象に残る人がいました。その人はとてもやせ細って、ふらつく足で近づいてこられました。その場で「私は癌で余命も告げられている」と聞かされ驚きました。中小運送会社の社長でした。

 会社のことが心配で、すぐ息子と一緒に相談したいと依頼されました。後日お伺いして財務諸表を拝見すると、想像以上に厳しい状況でした。資産売却による多額の借入金圧縮が急務と伝え、そのほかの改善策についても打ち合わせを行いました。その間、社長の目は極めて真剣で、前向きに改善実行計画を練りました。

 社長は、長年の付き合いである荷主と従業員に迷惑をかけたくないと終始気にしておられました。亡くなるまで経営意欲を失うことはなく、会社の将来像を描いていました。その後、引き継いだ息子さんが計画通り会社を立て直し、現在でも継続しています。創業者の会社への想いを痛感した経験でした。

 一方、対照的に事業譲渡の相談を受けた運送会社の事例もあります。ある会社の二代目社長は、配偶者の親である先代の急死で、勤務していたメーカーを辞めて運送会社に入りました。会社を継いだ後、運送業の低収益体質にびっくりし、「最初からいつか売却したいと思っていた」と話してくれました。許可事業である運送業はM&Aが多い業種の一つです。事業譲渡は事業継続の手段として有効であり、否定すべきものではありません。

 創業社長は主に後継者不在により譲渡を考え、二代目社長は主に事業運営の厳しさから売却を検討する傾向があります。大事なのは、社員のためにどの選択がよいかを考えることだと思います。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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