第26回:物流子会社が失敗する職能給体系

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第26回:物流子会社が失敗する職能給体系

2014年4月 1日

【質問】当社は中堅メーカーの物流子会社です。従業員は正社員が120人、パートが約200人です。実運送部門で車両を58台保有しています。当社の給与体系は親会社の体系に準じて職能給体系を導入していますが、運送業の実態に合わないのでは、と認識しています。基本給の体系を改定したいのですが、どのように進めればよいか教えてください。


 ある物流子会社で職能給体系の見直しを手伝ったことがあります。その会社は高賃金のため、自車両の運送部門労務比率が68%と極めて高く、傭車のマージンでようやく赤字を埋めている状況でした。職能給体系はバブル時代、春闘が盛んだった頃に多くの企業が採用し、現在でも大手企業を中心に普及している給与体系です。運送会社でも物流子会社を中心に採用されています。

 しかし、賃金テーブルに沿って運用するこの体系は年功型に陥りやすく、実運送の会社には全く向かない体系といえます。本来、運送部門の基本給体系はシンプルな日給月給の職種給か職務給とし、別途、毎月の働きぶり(質と量)や貢献度に応じて手当を付ける方式がドライバーの納得感が得られやすく、生産性向上にも結びつきます。ところが、親会社との関係で急激な変更が不可能な場合、職能給体系の枠組みを残しながら中身を修正することがあります。その場合は、よく次の手順で進めることがあります。

 (1)等級の数を全体で6等級程度に整理統合し、ドライバーは「定型」と「熟練」の1、2等級のみとする。管理監督層は3等級以上に位置付ける。併せて役職も整理する(2)賃金テーブルの上がり幅(ピッチ)を圧縮し、10年程度で打ち止め。昇格昇進時のみ昇給する仕組みに変更する(基本給のファンドの一部を役割給にシフト)(3)役割に応じた役割給を新設し、管理業務などに伴い発生する時間外手当の定額支給部分を組み込む。これにより年功よりも役割で処遇する方向にシフトする(4)人事考課の反映はメリハリを大きくし、低評価の場合は号俸ダウンを組み入れる(5)人事考課表は運送、倉庫、配車、事務、営業など職種や業務ごとに合致する内容で再作成する。

 なお、これらの変更は当然、社員の理解と同意を得て進める手順が必要です。現在、物流子会社が親会社と同じ職能給体系の場合、近年の経営環境下において既に問題が表面化していることでしょう。早めの対策を検討されると良いと思います。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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