第24回:運送会社の事業継承

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第24回:運送会社の事業継承

2014年3月18日

【質問】私は独立して運送業を始めて、もうすぐ30年になります。長男は3年前に当社に入社し、今は運送業務の一端を担っています。次男はまだ学生です。将来の事業承継も考えて準備をするつもりですが、どのような点に気をつければよいでしょうか?


 事業承継が何の準備もなく突然にやってくると、後継者が大変悲惨な状況になり、会社の経営が行き詰まることさえあります。事業承継対策は現社長が元気なうちに行う重要な仕事です。

 まず重要なのは、誰に承継するかの見極めです。ご質問の会社は、すでに長男が入社し、長男を後継者と考えておられるようですが、もし数年後に次男も入社した場合、経営者としての資質や適性がどちらにあるかをよく見極める必要があります。明らかに弟の経営能力が高いのに、長男という理由で適性がない兄のほうを社長に据えて失敗した運送会社の実例があるからです。

 後継者が決まったら、自社株を分散させずに後継者に集中し、スムーズに移転する準備をします。親族間で争いが生じないよう手順を検討することが大事です。遺言や代償分割の検討、定款の見直し、金庫株の活用など各種の対策があります。事業承継対策は持ち株状況などから十分検討する必要があり、税理士などの専門家に相談して進めると良いでしょう。

 また、自社株対策のみ考えがちですが、「経営」の承継が最も重要であり、長期的なプランで備えることが大切です。以前、中堅運送会社で仕切っていた社長が急に倒れ、息子が急きょ引き継いだことがありました。ところが経営能力が乏しく、すぐに労使間紛争が発生し、経営状態が急速に悪化して、ついには破綻してしまいました。

 事業承継は10年前から早めに準備する必要があります。成功している地方のある運送会社は、後継者を中堅物流会社に就職させ、数年間修業させた後に自社に入社させました。入社後も社員と同じ一担当者として運転、倉庫、本社管理業務を経験させました。その間、役員にしませんでした。ひととおり業務を経験した後、外部の物流管理研修で最新の物流を学ばせ、営業担当役員にしました。社長は次世代に引き継ぐにあたり、自分自身ができなかったことを後継者に託し育成したのです。社長の思いは後継者と社員に伝わり、スムーズな経営の承継ができたのです。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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