第21回:荷主から運賃引き下げ要求が来た

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第21回:荷主から運賃引き下げ要求が来た

2014年2月18日

【質問】現在取引している荷主の1社から運賃の引き下げを打診されました。荷主も厳しい経営状況との説明を受けましたが、当社としては今より低い運賃では到底採算が合わず、撤退も含めて検討しています。社内には取引は継続すべきとの声もありますが、このような場合、判断基準はあるのでしょうか?


 長びく不況を背景に、運送業界では大幅な運賃引き下げが続いてきました。最近は少し落ち着きつつありますが、厳しい経営環境の荷主も多く、今でも運賃引き下げの話が出てきます。長年取引している荷主とは、物流システムや作業内容を理解し、お互いの信頼も構築されていますので、引き下げが恒常的ではなく経営状況が回復するまでの一時的な協力要請であれば、基本的には継続するべきでしょう。

 ただし、恒常的な引き下げ要請となると話は別です。その荷主に投入している車両の原価分析から、限界利益がマイナスになるようなら早期に撤退を検討すべきです。なぜならば、限界利益が出ない状態で取引を継続すると、走れば走るほど赤字を膨らませるからです。つまり、その車両が仮に稼働しないで空いてしまう場合であっても、撤退したほうが利益を残せるからです。(※限界利益は車両別売り上げから変動費と直接固定費を引いて計算します)

 数年前、関東の運送会社で運賃引き下げ後に不採算車両を抱え、厳しい経営状況に陥っていた会社がありました。私は「運賃引き上げのお願い」を荷主に要望書として出すことを勧め、書面の書き方を指導しました。その会社は以前から、荷主に「仕事をする運送会社はいくらでもいる」と言われており、取引を切られることを恐れていました。しかし、継続しないほうが利益を残せることを説明し、断行しました。

 すると荷主から「やはりお宅でないと、うちの物流は任せられない」との言葉とともに、運賃の引き上げに同意してもらえました。その車両は不採算車両から、一気に最も高採算の車両に変わりました。

 取引運送会社を変えることは、荷主にとっても大変リスクのある判断なのです。運送会社としては車両別原価を常に把握し、限界利益の有無を捉えておくことが最も大事なことです。

(三井住友海上経営サポートセンター長・中小企業診断士・証券アナリスト・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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