第119回:最低賃金プラス5万円の壁

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第119回:最低賃金プラス5万円の壁

2017年12月 5日

【質問】ハローワークの求人票に賃金を掲載する際、金額をいくらぐらいで書けば応募が来るのでしょうか? また、求人票以外では、どのように載せれば良いのか教えてください。


 運送業向け経営アドバイスを始めて30年たちますが、この数年は深刻な人手不足の影響で求人対策の相談が最も多くなっています。求人対策だけで100社を超える運送会社から相談を受けています。募集媒体の種類は求人票以外にも多数あり、会社が所在する地域の環境、企業規模、業態、募集職種などで媒体の選択、組み合わせを考えるわけですが、賃金体系の現状から募集媒体を絞り込むケースもあります。


 例えば、オール歩合に近い賃金体系の会社がハローワークの求人票経由で募集することには無理があります。なぜならば、求人票の記載方法が厳格に決まっており、総支給額○○円~○○円程度といった表現で記載することが出来ないからです。もちろん、他媒体でも正確な記載が求められており、適当に書いてはいけませんが、ハローワーク求人票のa欄、b欄、c欄の書き方ほど記載方法が厳格ではありません。


 求人票の賃金欄で最も重要な金額はa+b欄の金額です。aは基本給、bは定額的に毎月支払われる手当、cはその他の手当です。a+b欄は固定的に毎月決まって支払われる金額の合計です。


 多くの運送会社の募集実態を見て感じる個人的見解ですが、a+b欄の金額がその地区(都道府県)の最低賃金プラス5万円を下回っている会社には応募がないようです。例えば、最低賃金が750円だった場合、最低賃金は月額ベースで約13万円になります(残業なしの場合)が、この地区の求人票でa+b欄が18万円以下であれば、支給総額が平均以上であっても応募はほとんどありません。本来、最低賃金の計算にはc欄のその他手当(歩合給を含む)も入るので、法的にはa+b欄の金額で上回っている必要はないのですが、実際にはa+b欄の金額に「最低賃金プラス5万円の壁」が存在していると感じます。


 私が運送会社から求人対策と賃金体系見直しの相談を同時に受けた場合、この金額の壁(採用出来るか否かの壁)を意識して、安定的な賃金体系への変更を提案することがあります。反対に、残業代未払いリスクの解消が当面の課題であり、歩合給のウエートをさらに上げたいと考える会社の場合には、ネット経由もしくは求人誌などでの募集を勧めます。募集方法は賃金体系と併せて検討しています。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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