第117回:今、賃金体系の見直しが必要な理由とは

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第117回:今、賃金体系の見直しが必要な理由とは

2017年11月 7日

【質問】最近、近隣の運送会社が賃金体系を改訂したと聞きました。このところ、同業者で賃金体系を見直す動きが増えてきたように感じます。なぜ今、賃金体系の見直しをしているのでしょうか?


 運送会社で、賃金体系見直しの動きが加速している背景には次の要因があります。


 ①残業代未払い問題や事故賠償金に関わる個人負担の問題など、賃金に関する労使トラブルが多発しているため、コンプラ面の整備が急務であること。


 ②最低賃金が史上最大の上げ幅となり、今後も同レベルの上昇が続く場合、人件費の膨張が見込まれるため。


 ③労基法改正が施行された場合、2019年4月から60時間を超える時間外労働に対する割増率が2倍に上昇する見込みであるため。


 ④人手不足の中、優秀な人材を確保するために、賃金体系の整備を検討する必要があること。


 これらの問題は、多くの会社が直面している経営課題であり、問題を解決するために賃金体系見直しを検討する会社が増えているのです。これらの問題は互いに密接に関連しており、同時に解決する手法を考えたほうが賢明です。しかし、賃金体系の見直しは同業他社のやり方を真似ればうまくいくというものではなく、運送業は各社ごとに事業内容が異なるため、各社により最適な体系が変わります。


 共通して押さえておくべきポイントを挙げてみます。まず、賃金体系を見直す際に最も留意すべき点は、決して賃金を下げないという点です。むしろ、多少賃金を引き上げることを考えてください。最低賃金の翌年上昇分を一年前渡しするつもりで取り組むことが成功のコツです。


 社員の安心感を確保したうえで、賃金構成の変更を提案します。賃金は全て最低賃金に含まれる手当てで構成します。家族手当や皆勤手当など、最低賃金に含まれない手当ては見直しの対象です。歩合給は総労働時間で除した金額が最低賃金にカウントされます。歩合給の時間外割増率は0.25で固定的賃金の1.25に比して低いため、人件費膨張対策として検討する会社もあります。ただし、人材採用の観点からは、毎月安定的な賃金にすることも考慮に入れる必要があります。


 従来の賃金体系の問題点を洗い出し、どのような賃金構成にすれば、コンプラ面と適正利益確保を両立させ、社員のモチベーション及び人材採用面を改善できるかを検討するわけです。賃金見直し作業は、半年から一年程度の期間を要しますので、必要性を認識している経営者は早めに決断すべきでしょう。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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