第112回:完全固定給制度を導入する時の留意点

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第112回:完全固定給制度を導入する時の留意点

2017年8月21日

【質問】現在、歩合給制度を採用しておりますが、社員から「もっと仕事をしたい」など配車に関する不満がしばしば出ており、配車係が苦労しますので、この際、歩合給を廃止し、完全固定給制度に変更しようと考えています。固定給制度に変更する場合の注意点を教えてください。


 完全固定給制度は、物流子会社や中堅規模運送会社の一部で導入している会社があります。中小運送会社で導入しているケースは、郵便逓送や清掃車両、市場輸送、およびコンビニ配送など、運行ルートや労働時間の変動が少ない地場業務の会社で時々見ることがありますが、運送業界では一般的な体系ではありません。


 固定給制度のメリットは、歩合給に比べて計算が極めてシンプルであること、配車の仕方による賃金変動が少ないため、不満が出にくいこと、チームプレーに適していることなどです。一方、メーカーなど他業種のサラリーマンとは違い、職業ドライバーの意識の中には、「働いて稼ぐ」プロ意識が強く根付いており、同じ職場で、だらだら仕事をする者の方が残業代により賃金が高いことがわかると、強烈な反発を感じます。


 私が以前、社員アンケートをとった運送会社のドライバーは、賃金が不公平であることを何よりも不満に感じると話していました。プロドライバーが望んでいるのは「平等」ではなく「公平」なのです。


 私は、適度なインセンティブが、やる気を奮い立たせる効果を何社も見てきたので、歩合給制度からいきなり完全固定給制度へ180度変更するよりも、固定給を主体にして1~2割程度の適度な歩合を組み合わせる体系に見直しをする方が効果的だと思います。仮に、歩合を廃止して完全固定給制度にしたいのであれば、無駄な時間を排除する実労働時間の現場管理を徹底してください。


 また、実務能力差により生産性の低い長時間労働の社員が高給取りにならないよう、評価制度とくに業績評価制度を緻密に作り上げ、生産性の高い社員こそが報われる制度にしてください。業務指示の順守度や作業効率などに高いウェイトを置いてください。月例賃金で報われなくても、個人別評価で賞与やポイント制退職金制度に貢献度を反映する仕組みです。


 つい最近、完全固定給制度の運送会社から歩合給に変更したいとの相談を受けました。社員が入社しても、早く仕事をこなす社員のほうからすぐ退社してしまうので、仕事が出来る社員から不満が出て困っているとの相談でした。固定給制度の良さと問題点を両面把握した上で、ご判断ください。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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