第109回:60歳以降のドライバーの処遇について

連載トップへ

第109回:60歳以降のドライバーの処遇について

2017年7月10日

【質問】わが社は定年を60歳とし、定年後は1年契約の嘱託社員として再雇用しています。ドライバーの仕事は従来通りで、賃金を3割程度減額しています。今般、定年後の賃金減額が出来なくなったと聞きましたが、60歳以降の処遇はどのようにすれば良いでしょうか。


 最近、労働契約法20条に関連する新たな裁判例が出たことで、高齢者の処遇に戸惑いを感じる会社があるようです。労働契約法は平成25年4月に改正され、第20条で有期労働契約の労働条件が期間の定めのない労働契約の労働条件と相違する場合において、「当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない」と定めています。つまり定年後、嘱託社員と正社員の労働条件に差を設ける場合は、その業務内容や責任度合に違いがあるか、または転勤、配転、昇進など人事異動の有無、もしくはその他の労使慣行や賃金を減額せざるを得ない財務状況など、合理的に説明できる理由が必要になります。


 ドライバーの担当業務や労働時間など職務内容を変更できれば問題ありませんが、慣れた業務を今まで通り継続してもらう場合には、これらの事項に基づき、両者の違いを一覧にして対照表を作っておくべきでしょう。例えば、正社員は配転・昇進あり、嘱託はいずれもなし。正社員は後輩社員の指導業務や営業業務あり、嘱託は自らの配送業務のみに専念。正社員は提案制度・職場改善会議・小集団活動に参加、嘱託は安全会議のみの参加で可、等々です。


 一方、今後は60歳定年制自体も再検討すべきでしょう。運送業は現在、ドライバー不足が最大の経営課題であり、社員には60歳以降もバリバリと働いてもらう必要があります。そうなると、定年を65歳に引き上げ、無期雇用社員のまま活躍してもらうほうが実態に合っています。この場合、60歳以降の賃金水準についてはあらかじめ労使で決めておく必要があります。労働契約法は有期雇用と無期雇用の社員に不合理な差をつけることを禁じており、正社員の賃金カーブをどう設定するかは、労使の合意に基づき決定することができます。従来は定年後に嘱託として再雇用し、賃金を引き下げ、高齢者雇用継続給付金受給により減額分をカバーすることが合理的な策と考えられてきました。しかし、今後は65歳までの総人件費を考慮し、正社員自体の賃金水準を適正に修正していくことが検討課題になってきました。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

過去の連載記事

連載トップへ
 

筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

GoogleAD