第108回:運送業における労働時間削減の進め方

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第108回:運送業における労働時間削減の進め方

2017年6月26日

【質問】わが社のドライバーの月平均残業時間は大型長距離で100時間超、4トン地場近距離で70~100時間程度とかなり多く、今後、長時間労働の改善に取り組みたいと考えています。運送業が労働時間削減に取り組む場合、どのような手順で行うか、参考までに専門家のコンサルティングの進め方を教えてください。


 運送業は従来から、荷主の要望や都合に合わせて、運行時間の設定や荷役作業を行ってきました。顧客第一の営業方針が強みとなり、営業基盤を拡大し、勝ち組になった会社も多数あります。しかし昨今、コンプラ重視の時代背景と人材採用・定着の観点から長時間労働の継続が困難になりました。近年、当方にも労働時間削減に取り組みたいとの依頼が複数あり、現在具体的に進行中の運送会社もあります。変形労働時間制の見直しやシフトの見直しでも、ある程度の効果が出ますが、根本的解決にはなりません。徹底して労働時間削減を進める際は、まず実態把握と課題分析から始める必要があります。


 具体的な手順としては、月間平均残業時間60時間超、80時間超、100時間超、120時間超と、20時間刻みで社員を分類します。個人別と荷主別に分類し直し、個人要因と荷主要因を正しく把握します。それまで漠然と考えていた原因を数値で正確に把握することが改善の第一歩となります。そして備考欄に残業が多くなる理由を書いていきます。


 そのデータがまとまると、現場管理者を含む幹部社員で共有します。現場管理者の時間がとりやすい土日に集まり、会議室でじっくり討議します。特に残業が多いドライバーについては、該当者のタコチャート紙(またはデジタコ日報)を映写し、問題点を全員で共有します。その際、決して運行管理者を責めることはしません。理由を確認するだけです。本人の問題か、荷主との関係でやむを得ない事情があったのかを確認します。


 具体的に問題点が共有化されたら、社長から労働時間削減に向けた明確な基本方針と管理者全員への取り組み指示を出してもらいます。併せて推進責任者を指名してもらいます。社長自身が直接担当する場合もありますが、通常は管理担当役員です。その推進リーダーのもと、現場管理者、総務などを含めたプロジェクトメンバーを決めます。そのプロジェクトメンバーとの間で月1回の会合を実施し、具体的な実行と効果測定をしていくことになります。


 専門家がサポートするメリットは、法的側面や経営的側面からみた方向性の判断が、会議中に瞬時に決まること、外部のリード役が存在すると確実に前に進むことの2点です。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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