第106回:ドライバーの給与に年俸制は適するか?

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第106回:ドライバーの給与に年俸制は適するか?

2017年5月29日

【質問】わが社では現在、ドライバーの賃金体系見直しを検討しています。検討の過程で、年俸制にしてはどうかという意見も出ています。運送会社の賃金体系に年俸制を導入しているケースはあるのでしょうか? また、年俸制はドライバーの賃金体系に適しているのでしょうか?


 運送業の賃金体系は、会社の運行実態その他諸条件によって適する体系が大きく異なります。メーカーや流通業など他業種の場合は、職能給や役割給など一般的に導入されている賃金体系が、どの会社にもある程度適合するのですが、運送会社だけは別です。特に、トラックドライバーの賃金体系はタクシーやバスの賃金体系とも異なり、複雑で多様に存在します。ご質問の会社の業務内容などが不明なため、一般論で回答いたします。結論を先に言うと、ドライバーの賃金体系に年俸制は適さない場合が多いと考えられます。


 以前、年俸制を導入しているA社から賃金体系見直しの相談を受けたことがあります。A社は1年間の個人別売り上げと燃料費、高速使用料を計算基準にして、前年度の個人別実績をもとに翌年度の年俸を決定していました。残業代は年俸に組み込むとしていました。年俸額の12分の1を月俸として毎月支払っており、賞与は支給していませんでした。


 賃金体系を年俸制にするメリットは、1年間、毎月の賃金支給額が一定となり、安定することです。A社が年俸制を導入したきっかけも、人材確保のために毎月の賃金を安定化することが目的でした。


 一方、年俸制のデメリットは、処遇への反映が遅いことです。社員が頑張った結果を賃金に表したくても、1年先にならないと反映されません。管理職など経営側に近い職種やSE、営業、配車係などであれば別ですが、ドライバーの場合は貢献度の迅速な反映が日々の仕事のやりがいや業務改善に結びつきます。例えば、事故を繰り返し起こしたドライバーは安定した給与を1年間受領した後、次の給与改定時に退職するでしょう。1年間リカバリーが効かないことを知っているからです。


 A社の場合は、残業代が明確に区分されていないなど割増賃金の支払い方法に不備があり、また年俸制の場合は法定の残業単価が高めになる欠点も考慮し、年俸制を止めて基本給と評価手当をベースとした日給月給制度に変更しました。そして、個人別業績は賞与に反映して、毎月の給与を安定させることにしました。


 ご質問に対しては、一概に言えませんが、年俸制はドライバーの賃金体系には向かないと考えて、検討を進めたほうが良いと思います。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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