第105回:賃金体系の整備は段階的に進めてもよい

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第105回:賃金体系の整備は段階的に進めてもよい

2017年5月15日

【質問】労務トラブルを未然に防止するため、現在の賃金体系を手直ししたいと考えています。しかし、今の歩合給体系はベテランドライバーに長年定着しており、なかなか着手できずにいます。賃金体系の整備は一気に進める必要がありますか?


 最近、全国の運送会社で賃金体系の不備による労務トラブルが頻発しています。最も多いのは、残業代の未払いに関するトラブルです。次に多いのは、事故賠償金に関する問題です。そのほかにも最低賃金未充足の問題などがあり、これらは法律に触れる可能性があるため、迅速に解決すべき問題です。


 また、ドライバー間での不公平感解消、業務効率の違いを賃金に反映させたい、求人対策の一環で賃金体系を整備したいなど、マネジメント上の問題もあり、賃金体系整備の理由は多数存在します。これらの問題はいずれも放置すると将来、重大な事態を招きかねません。しかし、人手不足の時代に拙速に着手し、社員の退職を誘発すると大変だ、との不安が経営者にあります。


 運送会社から相談を受ける内容で最も多いのは賃金制度改革ですが、相談を受けて、その会社の現状を分析し、状況によっては優先順位をつけて改善に取り組むことがあります。コンプライアンス面の解決は最優先に行い、マネジメント上の問題解決は次のステップで行うなどです。これは賃金体系の改善を労務リスク軽減の観点で進める方法です。仮に、現体系がコンプライアンス上の問題を内包する場合、一からやり直して全面改訂することが出来ればベストですが、社員にも賃金制度をガラッと変えることへの不安感があり、一気に実施することが現実的ではない場合があるのです。


 この場合、現状の問題点を社内で認識した上で、コンプライアンスの改善を段階的に行います。ひとまず、ここから手直ししようというやり方です。その場合、段階的スケジュールを決めて、この時期までには最終的に改善しようと取り組みます。その際のポイントは、社員の合意を取り付けることです。


 仮に残業代に関する改善であれば、「現在の体系を、こう修正する予定です」「残業代支払い額を明確にします」「併せて時間管理の方法を、こう整備します」「法定の計算による不足額を管理し、補填します」「従来の賃金が下がる場合には一定期間調整手当で補填します」など、社員の同意を得て進めることがリスク回避につながります。段階的に整備する選択肢も考慮に入れると取り組みやすいでしょう。最も良くないのは、改善取り組みを躊躇して手をつけないことです。


(コヤマ経営代表 中小企業診断士・日本物流学会会員・小山雅敬)

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

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筆者紹介

コヤマ経営
小山 雅敬氏

小山雅敬

昭和53年大阪大学経済学部卒業
都市銀行入行。事業調査部、中小企業事業団派遣、シンクタンク業務に従事。
平成4年三井住友海上入社。中堅中小企業を中心に経営アドバイス、セミナー等を多数実施。
中小企業診断士、証券アナリスト、日本物流学会正会員 等資格保有。

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