【第55回】裁判員休暇について(3)

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【第55回】裁判員休暇について(3)

2011年5月 2日

 裁判員休暇を設けるか否かについて、各使用者はどのように対応すればよいのでしょうか?


 前回述べたとおり、使用者が、年次有給休暇を使用させて裁判員として審理に参加させるのか、裁判員として審理に参加した場合の特別休暇を設けるのか、特別休暇を設けるとして、有給扱いとするのか、無給扱いとするのかという問題が発生します。

1 年次有給休暇として休んでもらう場合
 前述のとおり、使用者は、従業員に対し、使用者が指揮命令する業務に従事したことに対し、賃金を支払うのであり、従業員が裁判員として業務を行ったとしても、使用者は、裁判員業務に対して賃金を支払う必要はありません(ノーワーク・ノーペイの原則)。したがって、使用者が有休の裁判員休暇を設けず、従業員が年次有給休暇を利用しても法的には何ら問題はありません。

 ただし、ご存じのとおり、年次有給休暇が発生するためには、従業員が6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤するという要件を充足しなければなりません。したがって、入社して間もない従業員が裁判員に選任された場合は、無給で裁判員の審理に参加しなければなりません。

 裁判員の審理は、裁判員選任も含めて7割の事件が3日間以内に審理を終了するとされておりますが、否認事件や責任能力が争われている事件については長期化するおそれがあります。この場合についても、年次有給休暇がないからといって無給扱いにしてしまうと裁判員となった従業員の生活が成り立たなくなる可能性もゼロではありません。

 このような場合は、使用者が裁判員休暇を有休で定めていなくとも、任意に裁判員として審理に参加している期間を有休と取り扱うことは可能です。したがって、いつからいつまで有休扱いとするのか、有休扱いとするにしても賃金を通常通り100パーセント支払うのか、一部支払うのかは、会社の業務・経営状態を判断してケースバイケースで判断されたらよいかと思います。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

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