【第50回】営業成績による賃金の変動

連載トップへ

【第50回】営業成績による賃金の変動

2011年2月21日

営業成績が他より劣る社員の賃金をカットしてもよいですか。


 設問の事例の給与体系がどのようなものか不明であるので場合分けをして考えたいと思います。

 まず、営業成績により賃金が変動することを前提にした給与体系の場合は、そもそも社員の賃金は営業成績により定まるものですので、賃金を「カット」したことにはなりません。

 では、営業成績にかかわらず毎月一定金額の賃金を受領していた場合はどうでしょうか?その場合は、労働条件の不利益変更となりますので、賃金規定を変更しなければなりません。

 これまで述べたとおり、労働組合があれば労働組合の同意と非組合員の同意、労働組合がない場合は従業員個人の同意をとる必要がありますし(労働契約法第9条)、労働組合や従業員の同意が得られない場合でも、就業規則変更の必要性が高いかなどを考慮して合理性が判断されることになります。

 実務上はなるべく営業成績のふるわない会社従業員の方を説得して、何とか同意書を取り付けていただいてから賃金をカットした方がよいと思います。その上で賃金規定を変更し、労基署に届けてください。

 ほとんどの中小企業では、特に賃金テーブルなどもないと思いますので変更後の規定の具体例を挙げておきます。「営業成績が不良である場合(本当は具体的に述べる必要がありますので数値で表現できればその方がよいです)、従業員の賃金を●パーセント以内の範囲で削減することができる。なお、個々の従業員の削減額については個別に通知する」

 賃金テーブルがある場合で、役職を下げたり、資格を下げるなどして、賃金を下げる場合は、降格の規定が就業規則にあれば、賃金を下げることが出来ます。ただし、賃金を大幅に下げ、裁判所で争われた場合は、それが権利の濫用であるか否かで有効か無効かが定まります。裁判所で争われる事例は賃金を大幅に下げたものがほとんどで(10%以上)、ほとんどの事例で会社側が負けています。

 したがって、大幅に賃金を下げる場合は、個別同意を書面で取る必要があります(口頭では裁判所は信用しません)。

 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

GoogleAD