【第47回】年俸制と残業代

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【第47回】年俸制と残業代

2011年1月10日

年俸制の導入を考えているが、残業手当は別途支払いの必要がありますか。


 年俸制とは、業績評価や本人の役割に応じて1年単位で賃金の額を決定するものです。結論からいいますと年俸制を導入しても、一部の例外を除いて残業手当は別途支払う必要があります。

 よく、「うちの従業員は年俸制の適用だから残業代を支払う必要はありませんね」との質問をいただくことがありますが、年俸制が適用されても原則として残業代を支払わなければなりません。

 日本の労働基準法は、労働時間によって賃金を計算しますので、1日8時間または週40時間の法定労働時間を超えた場合は、割増賃金(いわゆる残業代)が発生します。会社と従業員が「年俸制を適用するので残業代は支払わない」という合意をしてもそれは無効なのです。

 労基法上残業代(深夜残業は除く)を支払わなくともよいのは、いわゆる管理監督者(労働基準法第41条第2号)、裁量労働者(労働基準法第38条の3、38条の4)の場合です。管理監督者とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断されるものです。具体的に言うと、会社社長と同様に出退勤の管理が為されず経営の意志決定に携わる方が該当します。この方については年俸制を導入してもしなくとも深夜労働以外は残業代が発生しません。

 裁量労働者の説明は紙面の都合上省きますが、要件が厳しく容易に認められません。
では、どうしても年俸制を導入したい、一方で残業代も新たに支払いたくない場合はどうしたらよいのでしょうか?

 この場合は、月給(年俸を12で割った金額)の中に業務手当などの名称の手当を付け、業務手当は残業代として支払う旨の規定を就業規則に設ければ、業務手当相当分の金額は残業代として支払ったことにすることができます。一方で、業務手当相当分以上の残業を行った場合は業務手当相当分を超える残業代は支払わなければなりませんので注意してください。

 ご参考のために年俸制の場合の残業代の計算方法を記載します。

 かりにAさんの年俸額が年間600万円で1ヵ月の平均所定労働時間が176時間の場合は、
【計算式】6,000,000÷(176時間×12ヵ月)=2840.9円(時給単価)となります。

 この時給単価に割増率と残業時間を乗じて残業代の額を算定します。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

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