【第36回】改正パートタイム労働法(3)

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【第36回】改正パートタイム労働法(3)

2010年8月 9日

物流運送は、運転手40名をかかえる運送会社です。ただし、人件費抑制のため、正社員の他に2種類の社員を雇っています。40名のうち3名は、アルバイト社員といって、正社員と仕事がほぼ同じで、雇用契約期間の定めはないですが、1週間の所定労働時間が短い者です。40名のうち5名は、契約社員といって、正社員と仕事がほぼ同じで、1週間の所定労働時間が正社員と同じで、雇用契約期間の定めはありません。ただし、正社員と契約社員は、正社員が月給制であるのに対し、契約社員は時給制です。正社員と契約社員、アルバイトを比べると、正社員の方が賃金水準が高くなります。

物流運送は、これまで会社設立以来、特に雇用契約書も定めることもなく人事労務管理をしてきました。契約社員、アルバイトから不満が聞こえてきたこともありません。ところが、ある日突然複数の契約社員が労働組合に加入し、労働組合は、契約社員、アルバイトを正社員にしろという要求を突きつけてきました。アルバイト、契約社員を正社員にしてしまうと、人件費があがり、会社の収益を圧迫し、赤字に転落してしまいます。物流運送はどのように対応したらよいでしょうか?


 前回まで、平成20年4月施行の改正パートタイム労働法について具体的な改正内容を説明しました。では、本件にはどのような問題があるのでしょうか?
 
 本件では、アルバイトや契約社員がパート労働法第8条の「通常の労働者と同視すべきパート労働者」と認められた場合は、賃金などについて禁止されている差別取り扱いを行っていることになります。

 前回述べたとおり、「通常の労働者と同視すべきパート労働者」とは、(1)正社員と業務の内容、責任の程度が同じであり、(2)当該事業主と期間の定めのない雇用契約をむすんでおり、(3)人材活用の仕組み、運用等が当該事業所に適用される通常の労働者と同一であるものをいいます。

 本件では、契約社員、アルバイトいずれも正社員とほぼ仕事が同じですので、上記(1)の要件は満たします。また、契約社員、アルバイト共に特に期間を定めることなく働いているので、上記(2)の要件も満たします。問題は(3)の要件ですが、かりに正社員に転勤などがなく、かつ管理職に登用されることがなければ、正社員と業務の内容、責任の程度が同じであり、上記(3)の要件も満たしてしまいます。

 上記の事例で、かりに労働組合が労働局などにこの件を報告し、アルバイトや契約社員が「通常の労働者と同視すべきパート労働者」と認められた場合は、物流運送はアルバイトや契約社員に正社員と同様の賃金を支払わなければならなくなります。物流運送の経営を揺るがす自体に発展します。次回は、そのようにならないための対策を述べます。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

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