【第3回】ドライバーに車両の修理費用を請求できるか?

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【第3回】ドライバーに車両の修理費用を請求できるか?

2009年4月27日

 物流会社A社の従業員Bさんは、不注意により、よく車両を電柱にぶつけることがあります。A社の総務担当者Cさんは、Bさんに対して車両保険で補償されない金額について、修理費用を請求したいと考えています。請求は可能でしょうか?またBさんに懲戒処分を命じることはできますか?


 雇用契約上、従業員は使用者の指示に従って、業務を誠実に遂行する義務を負います。よく車両をぶつけるということであれば、業務を誠実に遂行しているとはいえませんので、従業員は義務違反にもとづいて損害を賠償する義務を負います。そうすると、A社は、Bさんに対して、車両保険で補償されない損害について修理費用を請求できるように思えます。

 しかしながら、裁判所は、使用者は従業員を使用して利益をあげている以上、従業員を使用したことによる不利益も負担しなさいと判断することが多く、使用者の従業員に対する損害賠償を制限しようとします(過去の裁判例では、使用者の請求は4分の1に制限されました)。

 上記の事例でも、A社がBさんに対して損害の全額(車両保険で補償されない部分)を請求することは制限されることになります。


 具体的には、Bさんが、Bさん以外の従業員が物損事故を起こしたときとのバランス(他の従業員には請求していないのに、Bさんにだけ請求することはできません)、事故防止に向けてBさんがどの程度注意を払ってきたか、Bさんの過失が重いか、軽いかなどを考慮した上で決めることになると思います。

 ただし、使用者が何度注意しても同じ従業員が同じ事故を起こすのであれば、会社が使用者に車両保険で補償されない損害について、全額請求することも可能であると思います。

 会社が従業員に修理費用を請求するにせよしないにせよ、使用者は従業員から事故の状況を詳しく聞き記録を取ってください。できれば、後のトラブルを防止するため、従業員と話し合い、損害の弁償について示談書を作成したほうがよいと思います。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

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