【第2回】消費者金融への借金返済の遅延は懲戒や解雇の理由になるか

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【第2回】消費者金融への借金返済の遅延は懲戒や解雇の理由になるか

2009年4月13日

 消費者金融から取り立ての電話がかかってくる従業員がいます。どう対処したらいいでしょうか?


 中堅物流企業の総務部に勤務するAさんは、勤務時間中、複数の消費者金融の担当者らしき者からの電話を受けます。どうやら、従業員のBさんが複数の消費者金融からお金を借りているようです。Bさんは、勤続5年になり、Aさんの見る限り、日頃はまじめに働いています。

 Aさんは、当初は気にも留めていませんでしたが、最近消費者金融の担当者らしき者からの電話が増えてきました。消費者金融に多額の借金があり、返済を滞っていることは、懲戒や解雇の理由になるのでしょうか。

きちんと勤務している限りは、借金があったとしても、ただちに企業秩序を乱したり、業務遂行を妨げるものではありません。したがって、多額の借金を抱えていても、あるいは返済が遅れていても、それだけで懲戒や解雇になることはありません。

しかし、従業員が職場の同僚から金を借りてトラブルになったり、借金に悩み仕事に身が入らない場合(借金問題に悩みうつ病などになってしまう方も多くいます)は、個人の問題として放置することはできません。

まずは、本人から事情を聞く必要があります。そして、勤務態度に問題があれば(欠勤が続く、仕事にみが入らないなど)、指導が必要です。何度か指導しても、改善が見られない場合は、懲戒処分(懲戒解雇は厳しすぎますので、譴責などにとどめてください)もやむを得ないと思います。

どうしても従業員に退職してほしいのであれば、懲戒解雇ではなく、直属の上司が当該従業員に退職勧奨をした上で、退職届を提出させるようにしてください。退職勧奨に応じそうにないのであれば、退職勧奨をする際に、退職金を上積みすることも有効ですし、債務整理をする弁護士を紹介することも有効です(債務整理を弁護士に依頼すれば、取り立てが止まります)。

何もそこまですることはないのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、裁判所は、懲戒解雇の有効性についてはきわめて厳しい態度で臨むため、訴訟になった場合、会社側が勝つことが難しいのです。トラブル防止のためにはあくまでも合意退職を目指してください。

なお、頻繁に職場に電話をかけてくる消費者金融業者がいますが、度を超した督促の電話は、貸金業規制法の趣旨や金融庁のガイドラインに反しますので、この場合は、従業員を責めるのではなく、まず消費者金融業者にこのような電話はやめるよう抗議してください。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

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