【第19回】主治医との面会が拒否された場合は

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【第19回】主治医との面会が拒否された場合は

2009年11月30日

物流商事は、営業担当従業員の佐藤さんの対応に頭を悩ませています。佐藤さんが、しばしば会社を休むためです。突然、佐藤さんが会社に診断書を提出しました。診断書には、「抑うつ症状 業務に起因するものであり休養が必要」との記載がありました。業務が過重である場合など、業務が原因であるなら会社側は従業員に損害賠償義務を負います。


 今回は損害賠償の核になる診断書について。会社が従業員の主治医、もしくは診断書を記載した医師に面談することを求めるべきですが、従業員が、会社が自分の主治医と会うことを拒否した場合はどうしたらよいでしょうか?

 医師は、基本的に患者の同意がなければ、会社に患者の健康情報を教えることはしません。したがって、従業員が同意しなければ、会社は医師と面談することすら出来ません。しかし、会社は、従業員の健康状態を把握する必要があります。その結果、会社は従業員に休職を命じたり、業務を軽減しなければならなくなるからです。この場合は、会社は、従業員に対し、会社の指定する医師の診察を受けるよう命じるべきです。

 この場合も、従業員が会社の指定する医師の診察を受けることを拒否した場合はどうしたらいいのでしょうか?

 いい大人である従業員の首根っこをつかまえて、医師の診察を受けるよう矯正することは出来ません。この場合は、やむをえないので、会社は、その時点で会社が有している情報に基づいて処分を下さなければなりません。

 医師の面談を求めたり、医師の診察を受けるように命じても、従業員は従わないかもしれませんが、無駄ではありません。後に裁判になったときは、会社がなすべきことをなしたとして、裁判所が会社の判断を尊重する可能性が高くなるからです。

 以前も述べましたが、従業員がメンタルヘルスに問題を抱えている場合でも、それが業務上のものであるかそうではないかで会社のその後の対応に大きな違いがあります。業務が過重であるなど、業務を原因としてメンタルヘルスに問題を抱えたのであれば、会社は従業員に対し損害賠償義務を負うことになります。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

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