【第17回】業務調整の範囲とは

連載トップへ

【第17回】業務調整の範囲とは

2009年11月 2日

物流運送の佐藤社長は頭を悩ませています。若手営業職員の太田さんが、このごろ体調が悪いとのことでよく会社を休むようになったからです。佐藤社長が、周囲の従業員に話を聞くと、太田さんはこのごろ夜眠ることが出来ず、口数が少なく、考え込んだりすることが多くなったようです。この場合、佐藤社長はどうしたらいいでしょうか?


 佐藤社長は、太田さんの体調不良が、業務上のものであるか否かをまず判断しなければなりません。太田さんの体調不良が、業務を原因とするものであるか否かで、佐藤社長の取るべき対応が異なります。

(1)太田さんの体調不良の原因が業務ではない場合
 太田さんが、業務ではなく、例えば私生活上の問題からメンタルヘルスに問題を抱えていたとしても、佐藤社長が必ずしも太田さんの業務を調整しなければならないわけではありません。

 また、太田さんが会社に出勤せず長期間欠勤を続ける場合は、就業規則にもとづいて休職させる必要があります。労働者は、使用者に対し、労務の提供(働くこと)をし、使用者は労務の提供に対し、賃金を支払っています。労働者が、欠勤を続けるということは、労働者が雇用契約上の債務不履行をしていることになります。私傷病による長期欠勤は、労働者の債務不履行であり、その場合、使用者が契約を解除(解雇)することも可能です。

 ただし、ほとんどの企業では、長期欠勤=解雇とはせずに、まず休職規定を適用し、休職させることとしています。休職期間満了後も、体調が戻らない場合は、使用者は労働者を解雇することになります。休職制度の運用には様々な問題がありますが、それは後ほど記載することとします。

(2)太田さんの体調不良の原因が業務である場合
 この場合は、労災保険給付の対象となります。また、使用者に安全配慮義務違反があれば、民事損害賠償請求の対象となります。休業しても労働基準法19条の解雇制限の規定が適用されるため、療養のための休業中およびその後30日間は、原則として解雇することは出来ません。

 よく、安易に労災の申請を認める使用者がいますが、労災であると認められれば、ほとんどのケースで後に、会社の責任が問題となり、うつ病による自殺の場合は、数千万円の賠償金を支払わざるを得なくなることもあります。従業員の体調不良の原因が業務であるか否かは慎重に判断する必要があります。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

GoogleAD