【第11回】始末書を提出しない社員への対処法

連載トップへ

【第11回】始末書を提出しない社員への対処法

2009年8月10日

A物流運輸の佐藤課長は、顧客とトラブルを起こした鈴木さんに始末書の提出を求めましたが、鈴木さんは始末書を提出しようとしません。「譴責処分は、始末書をとって将来を戒める」との就業規則がありますが、始末書が無くとも懲戒処分をすることが出来るのでしょうか?始末書を提出しないことのみを理由に懲戒処分をすることが出来るのでしょうか?


 労務管理実務上、始末書の提出を求めることがよく行われます。前回も述べましたとおり、始末書を提出させることで、本人の反省を促し、不祥事などの再発を予防し、職場の秩序を回復することが目的であると思われます。

ところが、不祥事を起こしても、中には始末書を提出しない従業員もいます。就業規則には「譴責処分は、始末書をとって将来を戒める」との文言があることが多く、文言通りに読めば、始末書を取らないと懲戒処分をおこなうことが出来ないように思えます。しかし、始末書を提出して、素直に反省している従業員を処罰できるのに、始末書すら提出しない従業員を処罰できないというのはバランスを欠きますし、周囲の従業員も納得しません。

 したがって、このようなご相談があった場合、私は、「使用者が当該従業員に始末書を書く機会を与え、それにもかかわらず始末書を書かなかった場合には、当該従業員が始末書を書く機会を自ら放棄したとみなし、懲戒処分をすることは可能である」と、アドバイスしています。

 それでは、始末書を提出しないことを理由に懲戒処分を行うことは出来るのでしょうか?皆様もご存知のように、憲法では、思想良心の自由を保障しており、謝罪や反省を強制することはできません。始末書の不提出を処罰することは、事実上謝罪や反省を強制することにつながりかねず、多くの裁判例が、始末書を提出しないことを理由に懲戒処分を行うことは許されないと判示しています。

 したがって、始末書を提出しないことのみを理由に懲戒処分をすることはできません。

ただし、当然のことながら、始末書の提出を求めることは一向にかまいません。特に、不祥事などの事実経過については、積極的に報告を求めるべきです。事実経過を報告させること自体は、思想良心の自由を侵害しないからです。

※本記事はこれまでに「物流ウィークリー」本紙に掲載したものです。内容は記事執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
 

筆者紹介

向井蘭弁護士

向井蘭 労働組合問題など使用者側の労務問題を主に取り扱っている。
モットーは、企業と従業員のハッピーな関係を追及すること。
経営者側の労働問題に関するお問合せは、「労務ネット」まで
URL:http://www.labor-management.net/

GoogleAD