八起会・倒産110番

第280回:倒産を告げられて混乱

 私は長い間、次女に負い目を感じていた。長女と長男には経営が順調ということもあって、それなりにいい思いをさせてやれたが、次女にはこれからというときに倒産してしまい、ずいぶん苦労させてしまったからである。その次女が当時を振り返ってスピーチしてくれるという。私は真剣に次女の言葉に耳を傾けた。以下はその生の声である。

----野口のいちばん下の娘でございます。こんな大勢の人の前でお話しできる方の心臓はいったいどのような構造になっているのでしょうか。私はいま、胸がドキドキです。

 昨年の3月、父から「八起会30周年で何か話してもらえないか」と言われ、まあ1年も先のことだしどうにかなるだろうと思い、「ギャラは高いよ」と軽くOKしてしまいました。私はあまり先のことを考えないタチですが、今回ばかりは後悔でいっぱいです。

 倒産......、この言葉のイメージにはとても暗いものがあります。大きな声で言えることではありませんが、私の家も倒産を経験した一家です。当時、私の姉が短大生、兄が大学進学、そして私はこれから花の高校生活を満喫しようという矢先でした。そのとき、母から言われた言葉はこうです。

「お父さんの会社はもう続けられなくなったので、この家は売ります。アパートへ引っ越します。荷物はあまり持っていけません。布団と着替えと勉強道具くらいかしら」

 私は「えっ、それってうんと重大なことのはず。まさか、ウソでしょう」と思いました。しかし、母はふだんの連絡事項を告げるように語っただけでした。その夜、母の言葉を頭のなかで一生懸命理解しようとしましたが、ただただ寒気がして、頭が少しも働かなかったことと、眠れなかったことを覚えています。おそらく姉も兄も、同じ心境だったと思います。

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

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