八起会・倒産110番

第274回:体中に無数のアザが

 すっかり博打にのめり込んだ兄は、やがて多額の借金を残し、経営から退きました。そしてその借金を背負う形で、主人が社長になりました。当初は応援してくれる人や企業に恵まれ、主人もなんとか立て直せると思ったようですが、しっかりと数字を把握していたわけではなく、漫然と引き継いだようなものですから、うまくいくはずがありません。

 やがて借金を返すための借金が始まりました。町金融や闇金融にまで手を出すようになりました。そんな状態でも主人はあきらめようとしません。そのような日々が半年ほど経った頃、主人の精神状態がおかしくなりはじめました。ある日、部屋の掃除をしていたら自殺に関する本が出てきたのです。その日から私は心配で心配で眠れない夜が続きました。そしてすっかり疲れ果ててしまいました。

 でも、主人はもっと苦しんでいたのだと思います。何日も家に帰らず、連絡のとれない日もありました。突然、無言のまま帰ってきて、着替えをする主人をドアの外から見ると、体中に無数のアザができていました。あとから聞いたことですが、闇金融に監禁されて暴力をふるわれていたのだそうです。

 その頃、頼りにしていた親族にも裏切られ、逆にその負債まで背負うハメになり、もう誰も信じられなくなった主人は、「死」を選ぶ心境になっていたのだと思います。そしてついに、その悪夢の日がやってきました。

 その日の夕食時、主人はいつになく饒舌で、むかし昔などを語り合いながら久しぶりにたのしいひとときを過ごしました。私は、何か解決策につながるいい話でもあったのだろうと勝手に思い込み、その夜は安心してぐっすり眠りにつきました。ところが明け方、ふと目が覚め、隣のベッドを見ると主人の姿がありません。私はハネ起き、主人の名を呼びました。

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

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