八起会・倒産110番

第265回:棄てる神あれば拾う神あり

 窮すれば通ずという。棄てる神あれば拾う神ありともいう。倒産駆込寺が倒産寸前に追い込まれたところへ、私に講演の依頼が舞い込んだ。

 「倒産者のつどい」などという前例のないものをつくり、ボランティアで「倒産110番」を運営する変わり者がいる、そいつの話を聞いてみようじゃないか、ということだったのかもしれないが、私にとっては天の喜捨、干天の慈雨にも等しかった。

 その講演で、私は倒産の現実と悲惨を率直に語った。倒産で苦しむのは経営者だけではない。社員とその家族、債権者も同様である。さらには倒産が引き金となり、離婚や一家離散などの家庭倒産、自殺や一家心中などの人生倒産に至るケースもある。

 いわば、倒産は裾野の広い悲劇の源であり、たとえ1件、2件であろうと食い止めねばならない。そのための倒産防止法を、私は自らの失敗例をまじえながら、わが身を反面教師として訴えた。

 忘れもしない、そのとき「3万円」の講演料をいただいた。この浄財で事務所の電気・ガス・電話料が払えると思うと、涙が出るほどありがたかった。 それを皮切りに、資金が底を突きかけると講演依頼が入るようになり、そのたびに私はせっせと托鉢に出かけ、その浄財で倒産駆込寺を維持した。やはり「拾う神」はいたのである。


 やがてコンスタントに講演の口がかかるようになり、私は自信を深めた。というより、そういうものをさらりと捨てた。もしも駆込寺に多少なりとも存在意義があるとすれば、どんなに困っても神さまが「拾って」くれるはずだ。逆に閉鎖を余儀なくされたら、それはもう「必要ない」ということであろう。

 自分はただひたすら、人事を尽くして天命を待てばいい...そのようにハラをくくった。そして30年、八起会はまだ神様に見放されていない。

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

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