物流ウィークリーヘッドライン
Mさんが八起会へ相談に見えたのは、2度目の不渡りを出した直後である。倒産の後処理を教えてほしいという。私は八起会の顧問弁護士を紹介し、整理に当たってもらった。多少の曲折はあったが、後処理はスムーズにすすんだ。
その最大の理由は、Mさんが街金融やヤミ金融に手を出していなかったことである。大方の経営者は倒産の足音が近づくと、もがきにもがく。そして高利の金に手を出し、最悪の結果を招くケースが少なくない。
その点、Mさんの債権者はまともな金融機関に限られ、スムーズな後処理につながった。といっても倒産は倒産である。彼の会社は潰れ、新築したばかりの自宅は人手に渡り、無一文になったことは言うまでもない。
不幸中の幸いだったのは、奥さんの経営する商事会社が無傷で残ったことである。そこを生活の基盤に、Mさんは半年足らずで元の画商に返り咲いた。稀有のことである。この稀有を可能にしたものは何か。信用である。
Mさんは画家、画商仲間、得意先のどこにも迷惑をかけていない。むしろ、迷惑をかけまいとして、多大の借金をし、会社を潰したのである。そのことは美術界に知れ渡っている。
Mさんの信用は失われるどころか、ますますその厚みを増したと言っていい。それが稀有に結びついたのである。以来足かけ5年、Mさんの経営は前にも増して順風満帆である。
Mさんの再起のケースは、実に多くの教訓を含んでいる。この10年余り、大企業も中小企業も不祥事まみれ、偽装まみれである。そして多くの企業が消えていった。信用よりも金を追求した結果である。その好例は船場吉兆であろう。牛肉の産地偽装では潰れなかったのに、料理の使いまわしが発覚したとたん、倒産を余儀なくされた。信用は法律よりも重いのである。