物流ウィークリーヘッドライン
絵画は総じて高価である。水びたしの損害はざっと見積もっても1億円を下らない。このままでは倒産必至である。Mさんは即座に保険会社に駆け込んだ。が、保険金は出ないという。いくら掛け合ってもラチが明かない。Mさんは途方に暮れるしかなかった。
しかし、1億円の損害を画家や得意先にまわすわけにはいかない。画商の財産は信用である。その信用を失っては画商として生きていけない。といって、1億円なぞ到底ひっかぶれる金額ではない。
思いきって債権者会議を開き、経緯を説明して、損害のいくぶんなりとも勘弁してもらおうか・・・、そんな考えも脳裡をかすめていく。が、それをやれば確実に画商生命は終わる。
Mさんは「金」をとるか、「信用」をとるかの二者択一を前にして、迷いに迷う。信用をとりたいのはやまやまだが、その場合は倒産を覚悟しなければならない。いくら経営が順調でも、それなりに内部留保があるといっても、中小企業にとって1億円という金額はなまやさしいものではない。Mさんの迷いは二か月も続いた。そしてハラをくくった。
好きでとびこんだ美術の世界である。好きでなった画商である。金ごときで永久追放されてはたまらない。守るべきは信用である。そのためには借金も倒産もやむなし、と決意した。
決断後のMさんの行動は素早かった。手持ちの資金を掻き集め、金融機関から金を借りまくり、どうにか1億円の補填を完了することができた。
が、不幸にもMさんの予感は的中していく。金融機関をかけずりまわっているときは、とにかく借りなければの1年だったが、借りたあとの借金の山を見れば、到底地道な画商で返していけるような金額ではない。ひと月後、Mさんは2度の不渡りを出し、倒産を余儀なくされた。