物流ウィークリーヘッドライン
平成6年、倒産。自宅を失ったNさんは奥さんと2人、木造アパートの6畳2間へ引っ越した。あとでわかったことだが、Aは薬局へ取り立てにきた金融ブローカーを社長に立て、会社を設立していた。要するに、初めからNさんをターゲットにした計画的詐欺だったのである。
病院を辞めてからAに何があったか知らないが、いくら恨んだところで、すべて後の祭りである。虚脱状態のNさんに奥さんが言った。
「短い間だったけど、自分の薬局を持てて幸せだったわ。あなた、ありがとう。いい夢を見せてもらったわ」
この言葉はNさんを奮い立たせるに十分だった。というより、奮い立たざるを得なかった。せっかくの自宅は人手に渡り、2台あった高級車もいまはない。何よりも、奥さんの宝石類を一つ残らず売りとばしてしまった。そして、いまはわびしいアパート暮らし。Nさんは奥さんに再起を誓った。
「もう一度、薬局を開く。頑張って、働いて、自己資金で開く。銀行と手形には二度と手を出さない。何年かかるかわからないが、必ず開く。それまで待ってくれ」
不幸中の幸いだったのは、2人に子はなく、2人とも薬剤師の資格を持っていたことである。さっそくNさんはドラッグストアに、奥さんはスーパーの薬局に勤めはじめた。むろん、収入は普通の勤め人よりはるかにいい。2人で働きながらも生活費はぎりぎりまで切り詰め、せっせと貯蓄に励んでいく。
そして8年後の平成14年、Nさん夫婦はついに念願の薬局開業にこぎつけた。
その後もNさんは薬局を奥さんに任せ、自分は勤め続け、さらに4年後、もう1軒、薬局を開いた。夫婦で1軒ずつである。目下、両方とも業績は順調である。夫唱婦随の再起と言っていい。