物流ウィークリーヘッドライン
人生も経営も浮き沈みの連続である。上り坂・下り坂のほかに「まさか」という坂もある。ここに紹介するYさんは、人の何倍も浮き沈みを経験した特殊なケースだ。
彼の人生は「沈み」から始まったと言ってもいい。大学受験に失敗し、浪人が許されるほど裕福な家庭でもなく、泣く泣く進学をあきらめた。
縁故を頼って水道工事会社に就職したが、肉体労働できつく、仕事に対する喜びも将来への夢も持てず、辛い、不本意な日々が続く。が、縁故就職ゆえすぐさま辞めるわけにもいかない。石の上にも三年と我慢したところで、ようやく身体も慣れ、仕事の流れと内容もつかめるようになった。
そんなとき、何かと目をかけてくれた先輩が独立し、新しく水道工事会社を興した。先輩が去るとき、「おまえもあと10年頑張れば独立できるよ」と残してくれた、その言葉が、Yさんに希望をもたらした。自分も将来、独立して経営者になる...そんな希望である。
そこから彼の仕事に対する心構えが変わっていく。与えられた現場を単にこなすだけでなく、仕事の手順や効率を考えながら工夫を重ねていく。一方、受注はどこから、どのような形で入るのか、資材はどこから、どのような形で仕入れるのか、会社の仕組み全般にも目を配っていく。その目はすでに経営者のそれであったと言っていい。
そして4年が過ぎた。Yさんは独立へ向かってせっせと貯蓄に励む。就職以来、はじめて迎えた「浮き」のときであったかもしれない。が、好事魔多し。彼は一転して「沈み」の奈落へ突き落とされる。
その頃、体調がすぐれず病院へ行ったところ、肺結核と診断され、ただちに療養を申し渡された。 すべてがふっとんだ。独立の夢も希望も。そして襲ってきたのが絶望と、明日をも知れぬ命の不安である。