物流ウィークリーヘッドライン
Nさんの会社は元々、それほど利益が上がるような仕組みにはなっていなかった。官庁相手の取引は非常に利が薄く、利益率は1割以下にすぎなかった。しかも、やっかいなのが盆暮れの付け届けである。
コネで納入業者に加えてもらったNさんにすれば、この慣例を無視するわけにはいかない。その費用が年間200万円以上もかかった。これでは利益が上がるはずもない。それどころか自転車操業が精いっぱいである。
Nさんの不運は、曲がりなりにも自転車操業が可能だったことにある。官庁へ製品を納入すれば、1週間以内に現金が振り込まれ、それで製造業者への支払い、従業員へ給与を支給し、どうにか会社を維持していく。その繰り返しである。だが、そこには何の展望もない。
事実、Nさんは社長のイスに漫然と座り、ひたすら自転車を漕いでいただけである。あまりにも経営者としての自覚と行動力に欠けていたと言っていい。
一例を挙げれば、Nさんは営業活動もトップセールスもまったく行わなかった。官庁相手ではその必要がなかったからである。しかし、それでよかったか。むしろ、官庁との取引実績を信用と看板に、民間企業への進出を図るべきではなかったか。また、「官庁からの受注待ち」「それを製造業者へ丸投げ」「あとは振り込みを待つだけ」の業務なら、従業員を雇う必要もなかったはずである。
かくして業績は一向に上がらず、将来展望も開けぬまま自転車操業が続く。時代はすでに、バブル崩壊から失われた十年に入っていた。官庁の不正と無駄遣いがヤリ玉にあげられ、談合や随時契約が世論の批判を浴びるなかで、どこの官庁も経費節減に追い込まれていく。
つれてNさんの受注もジワジワと落ち、やがて自転車操業すら覚束なくなっていく。