八起会・倒産110番

第233回:甘かった現状把握

 地方の企業や中小企業を中心に、また倒産がふえてきた。倒産は経済的損失だけにとどまらない。中小企業の場合、あらゆる悲惨の引き金ともなりやすく、ときには自殺や一家心中など、社会問題にもつながっていく。

 グローバル化、原油高、地域間格差など、さまざまな要因が考えられるが、倒産は基本的に放漫経営の結果としか言いようがない。今回から、そうした悲惨のデパートとも言うべき実例を紹介しよう。

 Nさんは平成元年、36歳のときに脱サラし、東京・港区に事務機器販売の会社を設立した。それまで勤務していた事務機器販売の会社では、官庁関係の受注と納入を担当していた。官庁には彼の大学時代の同級・同窓生も多く、前々から「どうせなら独立してやればいいじゃないか」と声をかけられてもいた。

 その頃、Nさんは上司の取締役とうまくいかず、不遇をかこっていたときでもあり、思いきって独立に踏み切ったのである。

 Nさんは、まずまずのスタートを切った。某官庁に勤める友人がNさんの会社を納入業者に加えてくれたうえに、他の官庁も紹介してくれたからである。彼はそうした官庁に、ロッカーなどのスチール製品やシュレッダーなどを納入していく。2年目に4つの中央官庁、6つの特殊法人から受注を受けるようになり、売り上げも月商一1400万円前後と安定。そこで、彼は従業員を2人雇った。

 官庁関係の取引で何よりもありがたかったのは、支払いが早いことだった。製品を納入して、一週間以内に支払いが行われる。民間取引では考えられないことだったが、それがよかったかどうかはわからない。早い現金化とまとまった金が常に身近にあれば、誰だって気は大きくなるし、危機感も経営の現状把握も甘くなっていく。

 Nさんも、その例外ではなかった。

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

関連書籍のご案内

住友電工システムソリューション株式会社