八起会・倒産110番

第232回:弱点克服し再始動

 倒産後、子どものいないWさんは奥さんと2人、東京へ出て八起会の会員になった。彼は2度目の不渡りを出したその日に、再起を誓ったという。大抵の倒産者は打ちのめされ、しばらくは生きる意欲さえ持てないものだが、彼は違った。

 さっそく浅草の香辛料問屋に押しかけ、事情を話し、「もう一度基本から修業しなおしたい」と拝み倒して雇ってもらう。そして夜はパソコン教室に半年、薄記学校に1年通い、八起会の勉強も欠かさなかった。すべて再起のための準備である。

 Wさんは自分の弱点に気付いていた。計数管理の欠如がアバウト経営を招き、そのアバウトを埋めるために売り上げの拡大に走りすぎたことを。また、脇の甘さが7匹の白アリにたかりを許し、お人好しと規模縮小の勇気を欠いたことが倒産を招いたことを。そこを克服するための薄記学校であり、問屋修業である。その修業のなかでパソコンによる商品管理、インターネットによる営業を学んだことは、のちのち大いに役立っていく。

 その間、奥さんもパートで働き、爪に火をともすような生活をつづけながら、2人でコツコツと再起資金を蓄えていく。そして雌伏すること7年、ついにチャンスが訪れた。Wさんの郷里・九州で、後継者のいない唐辛子の家内工場が売りに出たのである。彼がとびついたことは言うまでもない。

 平成16年、Wさんは再び香辛料の製造・販売を始めた。25年前同様、奥さんと2人だけのスタートである。が、彼はもはやかつての彼ではない。営業はインターネットに任せ、ひたすら品質の向上を目指していく。

 2年目、その品質が認められ、県の料理組合に採用された。その信用が何よりの営業力となり、年商2億円を突破した。Wさんは目下、設備投資に踏み切るかどうか、贅沢な悩みのなかにある。

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

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