物流ウィークリーヘッドライン
一芸に秀でていれば、大抵はその道その道で成功する。が、経営だけはそうもいかない。営業手腕が抜群でも計数管理が苦手だったり、技術力・開発力にすぐれていても社員教育が苦手だったりでは、経営者失格と言っていい。経営は何をおいても総合力であり、バランスである。俗に経営センスというのも、そのことにほかならない。
今回から、抜群の経営資質に恵まれながら、経営バランスを失ったばっかりに倒産を余儀なくされ、そこからまた見事に再起した経営者の実例を紹介しよう。
Wさんは昭和54年、29歳の若さで独立し、香辛料の製造・販売を始めた。彼は再婚した母親の連れ子で、父親が実の父ではなかったことから、中学を卒業すると同時に、地元九州の薬問屋に就職した。が、向学心やみがたく、働きながら夜間高校に通い、大学も通信教育で卒業した。その点では理解ある会社だったと言っていい。彼はそこで14年間、調味料部門の営業を担当した。
Wさんに独立の心が芽生えたのは、ささいなきっかけからである。その日、会社の展示会に社長が中学生の息子を連れてきた。当然、社員全員が頭を下げる。しかし社員は、社長には世話になっているが、その息子に世話になっているわけではない。
そのときの彼のなかで違和感がはじけた。が、何年か経てば、その息子が社長になることは明らかである。彼の脳裡を「独立」の2文字がよぎった。
独立を決意したWさんは1年後、辞表を提出した。しかし引き止められた。彼の営業成績は社内随一だったのである。お礼奉公のつもりでさらに1年勤め、再び退職を申し出た。また引き止められたが、独立の心やみがたく、粘りに粘ってついに退職にこぎつけた。あとは独立あるのみ、目指すは調味料の製造・販売である。このとき彼は自信と希望にあふれていた。