物流ウィークリーヘッドライン
平成3年、Fさんは27年に及んだ経営に終止符を打った。会社整理はうまくいったが、さっそくにも生活費を稼がねばならない。すでに55歳になっていたが、幸い声をかけてくれる友人がいて、その会社に勤めることになった。が、それがどうにもならない。
人に使われることが、どうにも耐えがたいのである。だんだん嫌気がさし、Fさんは半年足らずで辞めてしまった。その後も何度となく職を変えるが、どこも長続きしない。
その頃、Fさんはすでに八起会会員になっていたが、ほかの会員に比べ、不平不満、不幸感がありありと表情に出ていた。私はその原因に気付いていたが、あえて助言しなかった。
もっと苦しまなければ、心の座標軸が動かないと思ったからである。倒産後も、社長だった頃の心をひきずっていては、生きにくいに決まっている。
そんなある日、Fさんのほうから相談があった。毎日が辛くてたまらないという。私は、ようやくその時がきたことを感じた。
「それはねえ、あなたが上手に会社を整理したからなんですよ。それはそれでいいことなんだけど、その分、どうしても苦労が足りない。楽は苦の種、苦は楽の種です。ほかの会員を見てごらんなさい。みんな破産したり夜逃げしたり、なかには自殺未遂と、倒産の苦しみをイヤというほど味わってきた人たちばかりです。だから反省もできるし、改めることもできるし、自分を変えることもできるんです。その分、あなたよりも幸せの近くに立っていると思いませんか」
ここがFさんの転機になった。その後、Fさんの口からグチが消え、仕事も長続きするようになった。が、再起は遠い。Fさんが企業向けプレミアム(販促)商品の企画・販売会社の経営者に返り咲いたのは、倒産から8年後のことである。