物流ウィークリーヘッドライン
Fさんの独立によって兄弟が分裂し、似たような業態の会社が2つ出来たことは、確実に両社の体力を消耗させていった。
弟によって得意先の7割を引き抜かれた兄は大打撃をこうむったし、兄によって原料の仕入れ先をおさえられた弟は、コストが高い上に品質の悪い原料を使わざるを得ず、最初から苦しい経営を強いられた。
しかし、血が濃ければ濃いほど、1度もつれた感情の糸はとけにくく、ともすればエスカレートしていきがちである。それが骨肉の争いの怖いところである。Fさん兄弟の場合も例外ではなかった。
兄が1袋300円で売り出せば、弟は採算を度外視して250円で売り出す。こうなると、もうビジネスでもなければ経営でもない。完全に意地の張り合いであり、会社のつぶし合いである。
こうした赤字耐久レースに会社の存立などあり得ない。必ずどちらかが倒れるか、ヘタをすれば共倒れとなる。案の定、Fさんの兄は3年後、2億7000万円の負債を抱えて倒産。その1年後、Fさん自身も倒産を余儀なくされた。平成14年7月のことである。
実は、Fさんが八起会へ相談にきたとき、経営はすでに破綻していた。私はやむなく破産をアドバイスした。そのときFさんが発した一言は、いまでも忘れられない。彼は真顔で「兄の会社がつぶれたとき、思わず快哉を叫びました」と言った。正直な気持ちではあろうが、私は衝撃を受けた。
そこに同族経営と骨肉の争いの怖さがある。Fさんにしてみても、兄弟でなかったならば、そこまで憎しみあうことも、つぶし合うこともなかったはずである。
その後、Fさんは八起会会員となり、目下タクシーの運転者をしながら再起を目指している。