八起会・倒産110番

第203回:人間万事塞翁が馬

 「人間万事塞翁が馬」という故事がある。塞とは辺境の砦(要塞)のことである。その辺境の地に老人(翁)が暮らしていた。ある日、老人の馬が逃げ出し、遠く異境へ走り去ってしまった。人々は老人に同情した。

 が、老人は「いずれいいこともあるさ」と言った。そして数か月が過ぎたある日、逃げた馬が立派な馬を伴って戻ってきた。人々は大いに祝福した。が、老人は「何か悪いことが起きなければいいが」と言った。

 老人は良い子馬に恵まれ、豊かになった。が、そんなある日、乗馬好きの佼が落馬し、足の骨を折ってしまった。人々は老人を慰めた。と老人がまたしても「またいいことがあるさ」と言った。やがて1年、異境の軍が突如、塞に攻め込んできた。

 人々は大いに防戦したが、この戦争で塞は青年男子の九割を失った。が老人と佼はかろうじて生き延びた。佼の足が不自由だったからである。

 この故事は、人の運命や幸・不幸は予測しがたいことを教えている。と同時に、幸が不幸のタネとなり、不幸が幸のタネとなることも教えている。経営も同様である。倒産のきざしは経営の絶頂期に芽生えるし、倒産が新たな飛躍のチャンスとなる例も少なくない。今回からそうした事例として八起会会員のケースを紹介しよう。

 Sさんは昭和31年、山形県の農家に生まれた。地元の高校を出て仙台の大学に進学したが、家が貧しく、学費も生活費もすべて自分で稼がねばならなかった。彼は3年半、仙台市内の一流ホテルでアルバイトを続けた。その間、ホテルで華やかな一面も垣間見た。

 ホテルで働く者と、そこへ出入りする者の間には、その生活レベルと社会的地位には、雲泥の差がある。いつかは自分も出入りする側の人間になってみせる・・・彼はそう心に誓った。

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

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