八起会・倒産110番

第198回:奇妙な電話

 景気は「いざなぎ」を超えたという。が、いまも倒産件数は年間1万3000件超と、毎日36社もの企業が倒産を余儀なくされている。その大半は中小企業であり、とりわけ回復の遅れが目立つ地方が厳しい。

 中小企業の倒産は悲劇のかたまりである。それまで築いてきた信用も名声も財産も一気に失い、経営者失格どころか人間失格のレッテルさえ張られかねない。

 社員や取引先にも多大の迷惑が及ぶ。何よりも地域世間に顔向けできない。そんなところから夜逃げや一家離散、さらには自殺や一家心中もまま起きる。

 八起会はそうした悲劇とほぼ30年、向かい合ってきた。その実例のなかから、死線を越えて再起したケースを紹介しよう。

 それは倒産110番のベルから始まった。
 

「もしもし、野口会長さんですか。会長さんのことはテレビや本でよく存じ上げています。前々からぜひ一度お目にかかり、お話を伺いたいと思っていましたが、やっとそのチャンスがめぐってきました。このチャンスをのがすと永遠にお目にかかれなくなってしまいますので、ご迷惑とは存じますが、ぜひお願いします。いま九州ですが、あす飛行機で東京へまいりますのでよろしくお願いします」

 なんとも奇妙な電話である。「会いたい」ということはわかるが、どんな用件なのか、まるでわからない。私は問い返した。

 「あす東京へいらっしゃるというのは、何か用事があって、そのついでに私どものところへ立ち寄られるということでしょうか」

 「いえいえ、会長さんにお目にかかるために行くんです」

 「わざわざ九州からいらっしゃるというのは、何かのっぴきならない相談でもあってのことでしょうか」

 再度問い返すと、とんでもない答えが返ってきた。  

筆者紹介

八起会 会長
株式会社ノグチプランニング 代表取締役
野口 誠一

【野口 誠一氏プロフィール】

昭和5年 東京生まれ、日本大学卒業。
昭和31年 25歳で玩具メーカーを設立し、従業員5名・月商150万円でスタート。
わずか5年で従業員100人・年商12億円を売り上げるまでに成長させる。
しかし、ドルショックと放漫経営がたたり、昭和52年に倒産。自宅や工場などの全資産を処分して負債を処理し、会社を畳む。
翌53年、倒産経験者同士が助け合う倒産者の会設立を呼び掛け、『八起会』を設立。
弁護士や税理士、再起に成功した会員らが無料で電話相談に乗る『倒産110番』を開設。
再起・整理などの実務的なアドバイスや経験談を交えた人生相談を無料で奉仕している。
昭和59年 株式会社ノグチプランニングを設立し、再起をはかり、執筆活動や全国各地で講演活動を展開している。

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