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産学連携でラッピング トラック使い地域振興
2016年11月 7日号

産学連携でラッピング トラック使い地域振興

ジェイネクストロジスティクス

 10月21日の午後1時20分。トラックのボディーをラッピングする兵庫県南あわじ市の工場に設置されたオート・ボディープリンターが左右に動きだした。始動スイッチを押したのはジェイネクスト ロジスティクス(大阪府南河内郡太子町)の山田純司社長。同社は今春、大阪芸術大学との産学連携プロジェクトをスタートさせた。物流をイメージしたラッピングのデザインを学生が作り、それぞれが自身の作品をプレゼンテーションするなどの作業を経て約半年。地域振興も視野に入れた産学連携の1号車は、ボディーに直接プリントする画期的なシステムを使って仕上がった。

 新しい技術・商品開発などの分野で産学連携による取り組みが活発だ。同社の場合は企業の認知度を高めたい狙いもあるが、根っこの部分には地域振興につなげたい思いがある。大阪芸大も地元にキャンパスを構えており、プロジェクトを通して「南河内郡からはじまる産学連携」「ふたつの力が南河内郡を全国に」と掲げる。

大阪芸術大と連携スタート


 デザイナー志望の学生らを前にプロジェクトの趣旨を説明した4月15日以降、同社幹部や学生、さらに実物を見てもらうためにラッピング予定と同型のトラックまでが同社と大学の間を行き交った。「デザイン化するうえでテーマが必要になるが、物流というと馴染みが薄い感じもある。それだけに学生から見てどんなイメージなのか...という好奇心みたいなものもあった」と山田社長。
 6月に入って学生から出てきたデザイン案には「スピード感」「人のつながり」「田舎と都市をつなぐ」「春夏秋冬」など生活に欠かせないライフラインを連想させるものも目立ったという。自分の作品に込めた思いをプレゼンする学生の姿に「感心と感動の連続だった」とのことで、社内ミーティングなどを重ねて最終のデザイン案が決まったのは9月16日。そして10月20日、施工地となる兵庫・淡路島へとトラックが運び込まれた。
 ラッピングとはいっても、印刷されたマーキングフィルムを張り付ける従来の施工法とは違うプリント型。いわば巨大なプリンターがトラックのボディーを直に印刷する格好で、立ち会ったメーカーの関係者によれば「片面の印刷で(プリンターのヘッドが)420往復する」という。左右と後部の3面印刷、さらに乾燥時間も加えて計3日間を要した。

SNS活用で積極的に発信

 完成から約1週間後の10月29~30の2日間、大阪芸大の学園祭でトラックを展示。また、11月2日には大学関係者らが同社を訪問し、最優秀と優秀2作品の計3点を作製した学生に、山田社長が表彰状と記念品を贈呈。「予想以上の出来栄えになった」(社長)という大型トラックは東京―大阪間をメーンに運行させる一方、「大学との話し合いになるものの、今後も毎年1台を作ってみたいと考えている」と社長。そのうえで「物流の認知度を高め、もっと会社を知ってもらいたい。将来的な人材確保の問題もあるが、まずは若い世代に興味を持ってもらうためにもSNSなどを活用して積極的に情報を発信していきたい」と話している。

AKCが新事業を開始
凹凸車体にも直接印刷


 淡路共正陸運(AKC、尾上昌史社長、兵庫県洲本市)はこのほど、トラックなど大型車両のボディーをラッピング加工する新事業部を立ち上げた。隣接する南あわじ市に所有していた遊休施設を施工場として活用するもので、「ジェイネクスト ロジスティクスと大阪芸術大学による産学連携プロジェクトのデザイン作品」が初仕事となった。
 事業化に際して同社が導入したのはエルエーシー(東京都町田市)が製造するオート・ボディープリンター「NNV10―Ⅷ」。印刷されたマーキングフィルムをボディーに張り付ける従来タイプではなく、車体に直接プリントを施す画期的なシステム。波状の素材が使われることも多いウイングなど凹凸や湾曲した部分にも印刷できるうえ、フィルム代や加工、張り付けの手間が省けるなど、従来の方法に比べてコストも安いという。また、「安価な特殊液を使って何度でも書き換えができる」のが最大のメリット。

動く広告塔で有効活用

 「日本全体の活力を上げようという地方創生の波があり、地域振興をターゲットにした受注が見込めると判断した。全国を走るトラックは動く広告塔になり得るし、エリア限定でPRしたいというようなニーズにも対応できる」と尾上社長。ラッピング加工のみの受注に加え、AKCグループ6社が保有する約600台のトラックを広告媒体として有効活用することも計画しており、すでに企業PRやイメージ広告などを考える会社・団体などから複数の引き合いがあるという。
 同社は今夏、鳴門海峡の「渦潮」の世界遺産登録をめざす活動を後押しするラッピングトラック2台を製作。左右と後部のボディー3面いっぱいに描かれた渦潮も、今回導入したタイプと同じく〝消せるラッピング〟を選択した。「いったん張ったフィルムを剥がすのは大変な作業で、張る前の状態に戻すのは不可能。手軽に書き換えられることで、お試し感覚で宣伝できるという広告主のメリットにもつながる」(同)と自信を見せている。