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外国人受入れの動き
2017年3月20日号

外国人受入れの動き

運送業界 進まない受け皿づくり

 トラックの運転者不足が慢性化するなか、若年者や女性の中から担い手を発掘しようとの議論や実践が動き始めて久しい。一方で、触れてはいけないものであるかのように、トラック運転者の担い手としては、業界の中でも俎上にすら載せられていないのが外国人労働者だ。業界外に目を転じると、途上国支援を目的とした技能実習制度の拡充や、「緊急措置」と称することで事実上の労働力を海外から調達することに走り出した職種、在留資格そのものが新たに設けられることが決まった職種、特区によって受け入れ法案が設定される職種などが目白押しだ。トラック運送事業者からは、新たな労働力の受け皿づくりが他の業種で着々と進行していることを横目に、おいてけぼりを食らったような疑問の声があちこちから聞かれる。

議論もない現状に疑問

 2月下旬に開かれた兵ト協の総務委員会。労働力確保策を話し合うための「特別委員会」の新設について議論がなされた。
 発言した9人の総務委員のうち、「外国人労働者の受け入れ」議論を進めるよう直接に求めたのは3人。「日本語をしゃべれないと難しい」などと間接的に触れたのが1人だった。もっとも、新設される「特別委員会」の要綱案には、外国人労働者の受け入れ議論の文言が入ることはなかった。
 委員の1人は会議後、「外国人労働者がトラックを運転する際は、荷主や荷受け側との日本語による意思疎通が一番問題になるだろう。だからこそ、人材養成も含めた議論が必要なはずなのに。いまは、そうした議論の端緒すらト協からも国交省からも聞こえてこない」と話した。
 国内では他産業での外国人労働者の受け皿づくりが着々と進む。最近、人手不足が喧伝される主な業種で受け皿の拡大ぶりを見てみよう。

他産業では着々と進行

 建設産業ではまず、途上国の技術レベルの向上に資するためとした国内制度「技能実習制度」が拡充されている。技能実習の制度が創設された1993年から認定職種が設けられた建設業ではいま、とびや左官などの21の職種、31の作業が認定対象に拡大されている(財団法人国際研修協力機構による)。
 また、技能実習とは別の枠組みも使って、建設業界では外国人労働者を集めている。入国管理法に定められる27種の在留資格の一つ「特定活動」のなかに建設労働者を盛り込む「外国人建設就労者受入事業」で、15年から実施している。目的は途上国支援ではなく、東日本大震災の復興と東京オリンピック開催に伴う労働力不足を補う緊急対策だ。
 介護分野では、建設産業とは違った法の枠組みでの受け入れが進行する。昨年11月、27の在留資格そのものを拡大し、28個目の在留資格として「介護」を創設するよう入管法が改定された。
 また、農業分野では、地域を限定した外国人労働者受け入れをするため、特区の手法を使った規制緩和がなされるための入管法の特例の法案作りがなされている(国家戦略特区諮問会議3月6日)。同様の特区による特例は、インバウンド需要の受け皿として外国人スタッフによる観光ガイドなども可能にするため、観光分野にも広げられる見込みだ。
 入管法上の位置づけは異なるものの、少子高齢化を背景とした人手不足を補う戦力として、またぞろの法改定が進む。
 その一方で、外国人労働力の議論すら許されていないかに見える自動車運転者という職種。あるトラック運送事業者は、「トラック業界の事実上の戦力となるかどうかは未知数だが、議論がなされないのはおかしい」と話す。

事業者への調査必要か

 「私としては、このトラック運転者等の運転技能については、途上国の技能と日本の技能に差がないのではないか」。14年4月、当時の太田昭宏国土交通大臣は記者会見で、そのように話した。建設や介護などで事実上の外国人労働者受け入れの動きが本格化するなか、トラックやバスといった分野でも登用の考えがあるかと問われたときの答えの一節だ。
 この答えの後、太田氏は、「建設をはじめとする技能という、特に鳶や色んなことをはじめとする、そういうのとは違う。私はそういうふうに思っておりまして、そういう意味では途上国への技能移転を通じた国際協力を目的とする外国人技能実習制度の趣旨には合致しないのではないか、というふうに私は認識しています」と答えている。途上国でも、日本でも同じ技能であれば、技能移転は必要はない、というものだ。
 ただ、建設分野では震災復興やオリンピック需要への対応という特例を持ち出してまで、外国人の人材を活用したいとする事情もあるため、技能実習とは異なる枠組みでの法整備がなされたところだ。なにも技能実習制度に固執する必要はない。
 外国人ドライバーの門戸が開いたとしても、トラック業界の人手不足対策になるかどうかは未知数だ。だからこそ逆に、受け入れ意向がどの程度あるのかといったトラック事業者への調査をすることが必要ともいえる。議論そのものがないところに合意は決して生まれないのだから。